ロンバケ──。96年に放映された木村拓哉の主演ドラマ「ロングバケーション」の略称だ。平均視聴率29.6%で、フジテレビの月9ドラマ視聴率で歴代3位。トップは「HERO」で、2位は「ラブジェネレーション」。すべてキムタクの主演作だ。
演じる役柄、設定、共演者ほか、すべてが社会現象と呼ばれるほどの影響力を持つ木村のドラマ。「ロンバケ」がオンエアされた月曜夜は、街からOLが消えるといわれた。ピアニストの瀬名秀俊(木村)と、婚約者に逃げられたモデル・葉山南(山口智子)の恋の行方に、日本中が胸を焦がせた。
名シーンを挙げれば枚挙にいとまがないが、そのひとつに、マンション窓からのスーパーボールがある。このシーン撮影で奇跡が起きていたと振り返るのは、テレビ誌の編集者だ。
「第1話で瀬名は、結婚式当日に婚約者に逃げられて無一文になった南と奇妙な同居生活を始めます。南の荷物から緑色のスーパーボールを見つけた瀬名は、マンション3階から落とすと、まっすぐ跳ね返ってきて、再び瀬名の手に収まります。トレンディドラマらしい胸キュンシーンですが、これはなんと、本番の一発OKだったのです」
持ち前の強運を発揮した木村。このシーンのあとに南は、「ウッソー!なんでー!」とはしゃいでいるが、予期せぬミラクルに本気で喜んだのかもしれない。
月9の視聴率トップである「HERO」では、共演者で俳優の八嶋智人がキムタクミラクルに遭遇している。リハーサル中、木村がゴミ箱を見ずにゴミを投げて、一発で入れてみせているのだ。
山口は現在、「監察医 朝顔」(フジテレビ系)に出演中。「ロンバケ」以来、実に23年ぶりの月9だ。18年には、テレビ朝日系の木村の主演作「BG~身辺警護人~」にゲストキャストで出演して、黄金コンビを一夜限りで復活させている。
「伝説のスーパーボール名場面は昨年、NHK連続テレビ小説『半分、青い。』でよみがえっています。脚本家の北川悦吏子さんが完全コピーを要望して、ヒロインの永野芽郁さんが幼なじみ役の矢本悠馬さんと再現してみせたのです。オンエア後にはTwitterで『ロンバケ』がトレンド1位になったほど、大反響でした」(前出・テレビ誌編集者)
10月にはついに、TBS日曜劇場で木村の主演ドラマがスタート。令和最初に挑むのはフランス料理の天才シェフで、共演者は鈴木京香が発表されている。
平成のドラマ史を振り返るうえで欠かせない木村というアイコン。10月に誕生する天才シェフは、どんな名シーンを後世に残すのだろうか。
(北村ともこ)