何人かの子どもがおもちゃで遊んでいると、ひとつのものを奪い合うことがあります。3歳頃までの子どもたちはまだ自分のものとそうでないものの区別がつかず、3歳以降なら「自分のではないと分かってはいるけれど、どうしても遊びたい!」という気持ちから手が出てしまうこともあるようです。そんな場合に、近くにいる大人としてどんなふうに接しますか?
■すぐに手を出さず、見守ることも大切
子どもは行動して、成功したり失敗したりすることで多くのことを学んでいきます。今、目の前のおもちゃを奪ってまで遊びたい、という気持ちが湧き上がっているのですから、その場で「ダメでしょ」と伝えても納得できません。まずは、その後で子どもがどう行動するのか、その子の思考と行動を見守ってあげてください。
例えば、おもちゃを奪われた子の反応はどうでしょうか。奪われた子もそのおもちゃで遊びたかったとしたら、泣いているかもしれません。その場合、奪ったおもちゃで遊んでいる間に隣には泣いている友だちがいます。しばらくは満足気に遊ぶかもしれませんが、隣の子の様子が気になるようになると、自分だけ楽しく遊んではいられなくなり、自分からおもちゃを返す場合があります。このとき、おもちゃを奪った子は、「奪ったおもちゃで遊んでも楽しくない、楽しくするには……」と大切なことを自ら学んでいるのです。
この思考を遮ぎっておもちゃを取り上げても、毎回同じことを繰り返すでしょう。「自分だけでなく誰かと一緒にいる場面では、お互いが心地よく遊べないと楽しくないのだ」ということは、言葉で伝えるよりも経験をした方がずっと分かりやすいものです。おもちゃを奪っても、ちゃんと返すことができた場合は「自分で気付けたね」と、たっぷり認めてあげましょう。
■子どもたち同士では解決しそうにないときに大人がサポートする
しばらく見守っていても、おもちゃを奪ったっきりで解決しそうにない場合は、大人が介入する必要があるでしょう。おもちゃを奪った子が楽しそうに遊んでいたら、「楽しいおもちゃだね。○○ちゃんは楽しく遊べているけれど、●●ちゃんはどうかな?」と、気付かせてあげてください。その後で、順番に遊んだり一緒に遊んだりすることでより楽しめているようなら、「2人とも楽しめる方法があったね」と声をかけてあげるのがいいですね。子どもが自ら気付いて「ごめんね」が言えた場合は、大きな進歩です。たっぷり認めてあげましょう。
まだ自分のものと友だちのものとの区別がつかない場合や、より楽しく過ごす方法に意識が向いていない子には、大人のサポートが必要なケースもあります。まずは様子をみて、自分の力で考えるチャンスを渡してあげてください。考える力は、自分で考えて選択・行動する過程で大きく伸びていくのですから。
(Nao Kiyota)