フリーアナウンサーの徳光和夫が1月4日、「徳光和夫とくモリ!歌謡サタデー」(ニッポン放送)に生出演し、昨年大みそかに放送された「NHK紅白歌合戦」について語った。徳光は番組のオープニングで、最新のAI技術でよみがえった“AI美空ひばり”について「一番がっかりした」「まったく僕はピンと来なかったです」とバッサリ。「あれだったら、ひばりさんの姿でもっとうまくできるんじゃないかなと思ったんです。昔の映像を取り入れたりして」と、自身の提案を述べた。
AI美空ひばりについてはネットでも「美空ひばりは技術的に凄いんだろうけど、違和感しかなかった」「AI美空ひばりは気持ち悪かった」「亡くなった往年の歌姫への敬意は感じなかった」など、徳光の意見に同意する声が多く聞こえている。
徳光はさらに、「あえて言わせてもらうなら、原点を失っているんじゃないかなということなんですね。歌合戦としての要素が年々希薄になっている」と問題点を指摘し、「特別企画の名の下に歌合戦の祭典に関係しない形のアーティストの登場回数がちょっと多すぎるような気がして」「結果、トータルでの出場者数が増えて1曲あたりに費やす時間が相対的に短すぎるんじゃないかなと思う。島津亜矢さんとか天童よしみさんとか歌の名手に割り当てられる時間が2分間程度というのは歌合戦を掲げる番組としては物足りない感じがした」「もっと歌をじっくり聴かせる番組として回帰してもらいたい。内容が盛りだくさんすぎて焦点がぼやけている」と、持論を展開した。
徳光の発言にネットでは「確かに徳さんの言う通り。企画が多すぎて歌に集中できない」「もはや歌合戦になってないし、紅白の存在意義はどこへ行ったのか」「プロの歌手の歌をじっくり聞ける番組に戻ってほしい。学芸会や口パクはいらない」といった意見が上がっている。
さらに、お笑いタレントで昨年の紅白でゲスト審査員を務めた上沼恵美子も1月6日、出演した「上沼恵美子のこころ晴天」(ABCラジオ)で、紅白について印象を語っている。
上沼は「あたしの知ってる紅白歌合戦ではなかったので驚きました」と、出演した感想を口にした。過去には司会として出演した経験もある上沼は「日本一の緊張する、緊迫した…。アーティストの中には、吐き出す人もいるんですよ、緊張で。リハーサルから、そういう感じの番組でした」と、過去の出演時の印象を語り、昨年の紅白については「NHKは敵に回したくないんですけど、あえて言わせていただくと、緊張感ゼロです」とキッパリ。「みんなで舞台いっぱいに踊って、盛り上げてるっていう意味は分かるんです」と、昨年の演出手法に理解を示しつつ「あれだけようさんNHKホールで踊ってると、誰の何の歌なのか、誰が主役なのかさっぱり分からない」と問題点を指摘した。
上沼はさらに、VTRや中継が多かったことについて「NHKホールのお客さんはお気の毒でした。ほったらかしでしたもん。23時45分まで、NHKホールで全部やるべきだと思います。1回ぐらい中継をつないでもいいけど、それも意味のあるところね」「現場にいた人間が言わしていただくなら、あれは紅白歌合戦ではない。歌のお祭りです。これは考えた方がいいですよ」と持論を述べた。
ネットでは「上沼さんの言う通り。緊張感が感じられなかった」「単純に、歌が短い。どこが歌合戦なのか」「上沼さん、困惑気味でしたね」といった反応が起きている。
「徳光さん、上沼さんと大御所のふたりが問題点を指摘したことは意義深いのかもしれません。今回に限ってのことではないのですが、歌と関係の薄い演出や“特別枠”の過多が歌合戦本来の魅力を削いでしまっているのは否定できません。昭和50年代あたりまでのような、誰もが良く知っている“ヒット曲の共有”が成立しにくくなっているので、昔のような歌合戦を望むのは難しいという事情はありますが、それにしても全体的な方向性が散漫で、誰に向けての番組なのか、よくわからなくなってしまっている印象です。平成時代になって導入した2部制も上手く機能していないように感じます」(音楽番組関係者)
平均視聴率は前半平均34.7%、後半平均37.3%で、とりわけ2部では歴代最低を記録してしまった今回の「紅白」。「役割は終わった」と言われはじめて久しいが、番組構成や出演歌手についてそろそろ見直しを図らないと、存在意義を問われてしまう危機的な状況だということは言えそうだ。
(石見剣)