テリー そんなお嬢様が、どうして芸能界に入ることになるんですか?
中田 母は歌舞伎が大好きでよく観に連れて行ってくれたので、その影響でお芝居に興味を持ちまして。
テリー 理由もまた、実にお嬢様っぽいね(笑)。
中田 なので、高校を卒業してすぐ、日活撮影所でテレビ部の俳優養成所に所属したんです。
テリー 就職も進学も頭になかった?
中田 はい、もういきなりプロダクションに所属して。3年たって芽が出なかったら魚市場の仲買人の仕事をするという条件で、やらせてもらったんですよ。
テリー やっぱり親は反対だったんだね。
中田 でも、その3年目で朝のドラマの主人公オーディションに受かったんです。それがちょうど「やっちゃば育ち」という八百屋市場の話だったものですから。
テリー 中田さんに白羽の矢が立ったわけだ。じゃあ、もう生活は一変したよね。
中田 それはもう。何しろ我が家は夜の8時に寝てしまいますから。9時に電話がかかってこようものなら「こんな夜中に何だ!?」って怒られますし(笑)。
テリー 築地はみんなそうですよね。
中田 ええ。それが撮影のために、深夜の2時、3時に帰ってくるのは当たり前。母たちが市場に行く時間に帰ってくるようになってしまいましたからね。
テリー でも、それと同時に中田さんの名前も全国区になっていきますよね。それは喜んでもらえたんじゃないですか?
中田 ええ、母は喜んでいましたね。
テリー そうすると、継ぐはずだった仲買の商売はどうなっちゃったんですか?
中田 結局、宝塚歌劇に入っていたお姉さんが跡を取って、続けてくれています。
テリー へぇ~、それはよかったですね。もしお姉さんがいなければ、今頃どうなっていたことやら。だってさ、「渡る世間は鬼ばかり」の中田さんを見ることができなかったんですよ?
中田 アハハハ、本当にそうですね。ありがとうございます。
テリー やっぱり中田さんの名前を聞くと、今だと「渡る世間は鬼ばかり」って感じですよね。ちなみに、あのシリーズは何年続いてるんですか?
中田 う~ん、22年か23年ぐらいでしょうか。
テリー うっひゃー、長いなぁ! 文子役、正直演じるのイヤでしょう?
中田 いえいえ、全然イヤじゃないですよ(笑)。やっぱり私の女優人生の中でも、大きな大きな節目になった役ですから。
テリー でもあのドラマ、ものすごい視聴率じゃないですか。出演しているっていうだけで、並大抵の苦労じゃないと思うんですよ。
中田 確かに、最初の頃は大変でした。私は文子という「役」を演じているわけですけど、特にホームドラマだと役=私というイメージでそのままつながってしまうんですね。ですから、シリーズが続くうちにどんどん世間の風当たりが強くなっていきました(笑)。