仕事のスキルを上げるために、何らかの“自己投資”をしている人は多いのではないでしょうか。
それは、誰かに“働かされている”だけの労働者から自ら主体的に働いていく労働者へとレベルアップするために、着実な土台を整えることともいえます。加えて、30代でキャリアの中堅に差し掛かってきたら、 「人に働いてもらうという発想を持つとよりいい」というのは、「ビジネスエリートになるための 教養としての投資」(ダイヤモンド社刊)の著者である投資家の奥野一成さん。
その考え方は、 働かされているだけの「労働者1.0」から、主体的に働く「労働者2.0」へとレベルアップする方法の一つとして紹介されていますが、ここでは“人に働いてもらう”ことの意味を奥野さんに詳しく教えていただきました。
── “人に働いてもらう”とはどのような意味ですか?
「“他の人の事業(企業)に投資する(=株式投資)”ということです。『株式投資なんてギャンブルみたいでなんだか怖い』と思う方が多いかもしれません。でも、私が言っている投資は、一般的にイメージされる“安いところで買って、値上がりしたら売って……”というものとはまったく違います。
世界的な優良企業の株式を買い、その会社のオーナーとしてずっと持ち続けるのです。そして、その企業に “働いてもらう”、という発想です。自分が働くよりも、高いパフォーマンスが出そうでしょう?
『投資より貯金のほうがいい』と考える方も多いでしょう。しかし、今は銀行に預金を預けておいてもほとんど金利がつきません。残しておく貯金は、むこう1年暮らすのに十分な金額があれば十分だと私は思います。
また、貯蓄にまわしている分を使って、iDeCo(国が創設した個人型年金制度。積立金額に応じて節税もできる)やNISA(証券投資に関わる税制優遇制度)という仕組みを利用すれば、税のメリットを得ながら将来に向けた資産形成ができます。
これらの仕組みを活用して、投資信託(投資したお金を運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する商品)を購入すれば、専門家があなたの貯金を、利益を上げる会社に投資してくれるのです。これが、“人に働いてもらう”ためのオススメの方法の1つです」
──確かに、投資と聞くと、「よく分からない、ちょっと怖いもの」と思ってしまうのですが、「投資先の有名企業の創始者に働いてもらう」といえばイメージが変わりますね。より自分が労働者としてレベルアップするためには、どんな投資をすればいいですか?
「私がオススメしたいのは、より“手触り感”があるものに投資をすること。手触り感とは、その事業がどう伸びるのかをきちんと自分が納得でき、具体的にその事業の進捗について関心を持ち続け、応援し続けることができるという意味です。
例えば、私が手掛ける投資ファンドで『おおぶね』というものがあります。これは、なぜその企業、事業が伸びると見込んだのか、そして実際、その事業がどのように展開されているのかを明確・ていねいに投資家に知らせて、投資する人とともにその事業の成長を見守ることができる仕組みを大切にしています。
投資する企業のどのような事業がどのように発展していて、だから利益が生まれている、その仕組みを知ることができると、事業の仕組みの学びにもなります。すると、自分自身がしている仕事自体に関しても、自分がどう役立っているのか、どういう働きをするべきなのかがはっきりと見えてくる、そんな相乗効果も期待できますよ」
自分のスキルを上げながら、“自分よりも優秀な人(事業)”に、将来の財産を増やしてもらう──この春からは、そんな賢い「労働者2.0」を目指してみたいですね!