タレントの香取慎吾にとって、自身の役者としてのキャリアを見つめ直すキッカケになったのは、同じ「新しい地図」に身を置く戦友・草なぎ剛だったという。
2人は、毎月恒例の生配信番組「7.2 新しい別の窓」(ABEMA)の8月7日放送回に出演。女優・前田敦子を交え、“この人には勝てないと思った俳優”にまつわるトークで盛り上がると、香取が草なぎの演技力にリスペクトの念を抱いていることがわかった。
このテーマについて、前田は舞台で共演する江口のりこの名前を口にし、「達観してるんですよね。誰に対しても凄い平等な感じで、サバサバしてるのがカッコいい」と、役者としてだけでなく、“人としても勝てない”と感じているという。
すると、香取は「勝てないというか、『ミッドナイトスワン』の草なぎを見て、自分はお芝居を辞めようと思った」と、2020年公開の草なぎ主演作品を鑑賞した際の衝撃を語った。
続けて、「見終わって、試写室を出てすぐツイートして。(役者を)辞めないけど、辞めようかと思った。これだけ近い人とか関係なしに素晴らしいと思って、こんな人がいるのに何で自分はやっているんだと思った」と絶賛。目の前で演技力をこれでもかと称えられた草なぎは「嬉しい褒め言葉だよね」と喜んでみせた。
香取は20年9月4日のツイートで「映画ミッドナイトスワンを観た 強く、強く生きなければと上を向かせてくれた なのに弱い僕だからか 涙を止めることができなかった」と綴ると、「映画の中に僕の知っている草なぎ剛はいなかった」とも表現。常に社会の片隅へと追いやられてきたトランスジェンダーの凪沙役を演じ切った草なぎには、稲垣吾郎からも「何十年も一緒にいて見たことのない顔」との言葉が寄せられていた。
「もちろん同作での草なぎの芝居に魅了されたのは、“身内”である香取、稲垣だけではありません。俳優・竹内涼真は『俳優とはこうあるべきなのか』と驚嘆しています。人気脚本家・宮藤官九郎も『すんごいもん観た。草なぎくんがとにかく美しい』『草なぎ剛に限界はない』などと圧倒され、広末涼子は『泣きました。美しくて、泣きました』。
ほかにも、『ミッドナイトスワン。泣いてもた』(お笑いコンビ・ダウンタウンの松本人志)、『もはや芝居ではない気がします。作る演技を超えている雰囲気がしました』(同作の内田英治監督)、『間違いなく今年のナンバーワンです』(歌手・あいみょん)などなど、様々なジャンルの著名人から評価されています。演技を通り越した、役柄への“同化”だと表現した内田監督の指摘通り、長年ともに過ごしてきた香取や稲垣にとっても、草なぎから新たな発見と衝撃があったのかもしれません」(テレビ誌ライター)
「ミッドナイトスワン」は第44回日本アカデミー賞・最優秀作品賞を受賞し、草なぎも最優秀主演男優賞に輝いた。
香取、稲垣からの“あんな草なぎ剛は知らない”との絶賛は、草なぎにとって役者冥利に尽きる言葉だったに違いない。
(木村慎吾)