映画を愛する作り手にとって、「ファスト映画」騒動は様々な意味で許せないものだという。脚本家で映画監督の三谷幸喜氏が、映画界を悩ませてきたダイジェスト動画について物申した。
昨今、YouTubeでは映画の映像や画像を無断で使用し、10分程度の短尺に編集してストーリーを明かしてしまう「ファスト映画」なる法律違反動画が蔓延。著作権法に抵触するのはもちろん、ネタバレの要素も含んでおり、かねてより映画会社から問題視されてきた。
11月19日放送の「情報7days ニュースキャスター」(TBS系)では、インターネット上にこの「ファスト映画」をアップした投稿者に対し、1再生あたり200円、総額5億円の賠償命令が言い渡された件を特集。これについて意見を求められた三谷氏は「著作権の問題も当然あると思うんですけど、作品を短くしちゃうわけでしょ。絶対困るんです」と語った。
三谷氏は続けて「僕みたいなコメディを作ってる人間からすると、僕の作品、短くされちゃうと絶対面白くなくなっちゃうから、『三谷の作品、つまんないな』って思われるのがいちばんイヤなんです」と述べ、三谷作品は特にダメージを受けてしまうというのだ。
「三谷氏が脚本や監督を務める映画には、本筋と大きく関わることのない部分にも、フリや小ネタ、伏線などが随所に散りばめられており、そうした繊細な要素が“三谷作品のDNA”として高く評価されています。制作者ではない人間が勝手に短くした『ファスト映画』では、その醍醐味が失われてしまうことから、三谷氏にとっては著作権侵害以上に“いちばんイヤなこと”だと表現したのでしょう。 ネット上でも『最もなご意見』だとする声のほか、『厳しく取り締まり、厳しく罰することが知的財産権を守ることだと思う』『映画は話がわかればいいというものではない。この取り締まりが行われたことで、実際に映画を観て楽しむ人が増えてほしい』などといった反応が見られました」(テレビ誌ライター)
ただでさえ、映画界はコロナ禍で大きな経済的ダメージを被っており、ダイジェスト動画の横行は泣きっ面に蜂。厳罰をもって対処する必要があると言えるだろう。
(木村慎吾)