またもや朝ドラでワープが描かれたのか…。そう呆れる視聴者もいたようだ。
4月26日放送のNHK連続テレビ小説「らんまん」第18回では、綾(佐久間由衣)が大きなショックを受けることに。その足で実家のある佐川から一路、高知へと向かっていた。
前回、祖母のタキ(松坂慶子)から綾は、主人公の槙野万太郎(神木隆之介)が本当の弟ではなく、従兄弟だったと明かされることに。しかもタキは綾と万太郎に「めおとになれ!」と命じていた。
綾は蔵人の幸吉(笠松将)に心を寄せており、家を飛び出して幸吉のもとへと走った。畑仕事をしている幸吉を見つけるも、別の女性が甲斐甲斐しく幸吉の汗を拭いている様子を目の当たりにし、自らの想いが通じないことを思い知らされたのだった。
「ショックを受けた綾が向かった先は、高知でした。奇しくもこの日は、自由民権運動の活動家・早川逸馬(宮野真守)の率いる声明社が、演説会を行う当日。身分も性別も関係なくすべての者が人権を持つと主張する早川の言葉を思い出し、心のよりどころとすべく足を運んだのでしょう」(テレビ誌ライター)
綾が高知に向かったと知った万太郎は後を追うことに。幸い、演説会の会場で無事に綾を見つけることができた。その後、万太郎が演説台に引き上げられるといったアクシデントもあり、どうやら声明社は今後の万太郎にとって重要な意味をもつらしい。
だが視聴者からは、そもそも綾が声明社の演説会に参加したこと自体がおかしいとの指摘もあがっている。それは佐川と高知の位置関係を考えれば当然だというのだ。
「佐川と高知は土佐街道で結ばれているものの、その距離は約30キロもあり、徒歩では優に7~8時間はかかります。しかも途中には仁淀川があり、作中の明治14年(1881年)には橋らしい橋も架かっていなかったはず。着の身着のままで飛び出した綾は渡し舟の船賃も持っておらず、そもそも高知にたどり着くこと自体が不可能です」(週刊誌記者)
しかも声明社の演説会は第11回で示されたチラシに「正午拾二時ヨリ」と明記されていた。いくら商家の朝が早いとは言っても、タキが万太郎と綾を呼びつけたのはせいぜい朝の5~6時くらいだろう。そこから家を飛び出した綾が、幸吉の畑によってから高知に向かったら、演説会に間に合うはずもない。
すなわち綾は30キロもの道のりを「ワープ」していたことになる。わりと史実をなぞっている「らんまん」にてワープが飛び出したことに、朝ドラファンからは<あの迷作の再現か…>との呆れ声も漏れ出ているようだ。
「2作前の『ちむどんどん』では、登場人物がワープしまくることが酷評されていたもの。とくに酷かったのが東京編で、ヒロインの暢子が住んでいる横浜の鶴見、勤務するイタリア料理店のある銀座、そして暢子が自分の店を開いた杉並の3カ所が、まるで隣町であるかのように描かれていたのです」(前出・週刊誌記者)
NHK大阪放送局が制作した前作の「舞いあがれ!」では、そんなワープは影を潜め、移動手段もしっかりと描かれていた。ところが制作がNHK東京放送局に戻ったらまたもやワープが復活してしまったのだから、いわゆる「AKクオリティ」(AKはNHK東京放送局の略称)と揶揄する声も続出しているようだ。
万太郎が東京旅行から戻ってきた第11回では、高知の港に綾が迎えに来ていた。その姿に、そんな遠くまで家族が迎えに来るものかと怪しむ声もあがっていた。
この時はさすがにワープは描かれていなかったものの、まだ土讃線(※明治22年に開通)もなく、四国新道(現・国道33号)にバスが通れるようになったのは昭和になってからのこと。どうやら「らんまん」の登場人物は30キロもの街道を、隣町に行くほどの速さで移動していたようだ。