自分の車はどうするの? 不思議に思った視聴者も少なくなかったようだ。
5月18日に再放送されたNHK連続テレビ小説「あまちゃん」第40回では、春子(小泉今日子)の夫で個人タクシー運転手の正宗(尾美としのり)が、北三陸市のタクシー会社に就職したと報告。離婚調停中の春子が呆れかえる場面があった。
娘のアキ(能年玲奈)と共に東京で3人暮らししていたが、春子は正宗に愛想を尽かし、アキを連れて故郷の北三陸にとんぼ返り。すると正宗もちゃっかり北三陸への移住をもくろみ、首尾よく就職まで決めたのだった。そんな正宗に対して疑問の声があがっているというのである。
「春子と出会ったころはタクシー会社に勤務していた正宗ですが、現在は個人タクシーとして自営業者になっています。作中でも自分のタクシーで北三陸まで駆け付けた様子が描かれており、それなら自分の車を使ってそのまま個人タクシーを続ければいいじゃないかと、首をひねる視聴者も少なくありません」(週刊誌記者)
だが、もし正宗が北三陸で個人タクシーを始めていたら、口さがない視聴者から<考証不足だ!>との批判が飛び出ていたことは確実だという。
個人タクシーには「営業区域」が定められており、許可を受けた区域以外で業務を営むことは認められていない。東京・世田谷在住の正宗は「特別区・武三交通圏」という区域で営業しており、岩手・北三陸で個人タクシーを営むことはできないのである。
「しかも個人タクシーは日本全国どこでも営業できるわけではありません。国土交通省の自動車交通局長通達により、原則として人口30万人以上の都市を含み、流し営業が成り立つ区域のみが対象となっています。岩手県では盛岡都市圏のみが対象で、北三陸市を含む三陸地方では個人タクシーの営業許可が出ないのです」(前出・週刊誌記者)
そのため正宗が北三陸で働くためには、タクシー会社に就職する必要があった。ただその場合、彼が乗っていた個人タクシーの車両はどうなるのだろうか?
「タクシー会社によっては運転手による車両の持ち込みを認めているところもあります。法人タクシーの車両には個人タクシー用よりも厳密な規定が定められていますが、正宗が乗っている韓国ヒュンダイのグレンジャーは日本市場向けにタクシー仕様車として販売されていたモデル。作中の2013年当時には東京都内でも少なくない台数が走っていたものです」(前出・週刊誌記者)
やはり朝ドラとあって、その辺の考証はしっかりできていたようだ。