その言葉は「オーディション合格」を意味していたのかもしれない。
6月2日に再放送されたNHK連続テレビ小説「あまちゃん」第53回では、アキ(能年玲奈)とユイ(橋本愛)によるユニット「潮騒のメモリーズ」が、ついにデュエットを披露。お座敷列車で乗客たちが喝さいを送っていた。
お座敷列車は3便すべてが満席に。さらに地元のばっぱたちが「オラたちも乗せろ!」「接待しろ!」とネジ込み、駅長の大吉(杉本哲太)が「もう一往復するべ!」と決断したことで、臨時便が運行されたのだった。
「その臨時便にはアキのことをふった種市先輩(福士蒼汰)も乗ることに。就職で上京するために折り返しの畑野駅で降車し、アキとしばしの別れとなっていました。その様子に視聴者が感動するなか、もう一人、怪しげな人物が乗り込んでいたのです」(テレビ誌ライター)
その人物とは琥珀職人見習いの水口(松田龍平)だ。ただ琥珀うんぬんはあくまで口実で、実際には大物プロデューサー荒巻太一(古田新太)の部下として、ユイとアキをスカウトに来ていたらしい。
ユイは第51回にて、水口が荒巻サイドと電話で話しているところを目撃。その電話で水口はお座敷列車の席を押さえてあると語りつつ「問題は歌ですね、歌唱力が。可能性ですか? 今のところ五分五分」と、二人の評価を口にしていたのである。
今回、首尾よくお座敷列車に乗り込んだ水口は、ユイとアキのパフォーマンスをビデオカメラで撮影。その動画を荒巻に送る手はずのようだ。ともあれ未だに正体を明かしていない水口だが、実はユイにスカウトだと見破られていることを自覚していたかもしれないというのである。
「折り返しの畑野駅で水口は、アキと種市の会話を遠くから見守っていたユイに『よかったよ、歌』と話しかけ、列車に乗り込んでいきました。普段は口数が少なくぶっきらぼうな水口が、自分からわざわざ歌の感想を話しかけるのはいかにも不自然。おそらく彼は荒巻サイドとの電話をユイがこっそり聞いていたことに気づいており、あえてこの場で『オーディション合格』と告げたのではないでしょうか」(前出・テレビ誌ライター)
とはいえ、そうであれば水口はなぜこのタイミングでユイに声をかけたのか。お座敷列車の運行が終わってから、いつものバー梨明日などで話しかければよさそうなものだ。
しかし水口があえて畑野駅をその場に選んだのは、必然だったというのである。
「アキとユイによる『潮騒のメモリーズ』はこの日が最初で最後のパフォーマンス。地元志向のアキと、東京志向のユイでは、スカウトする難易度も大きく異なります。畑野駅ではアキが上京する種市と熱い握手を交わし、北三陸に残る意思を明確にしました。東京に行きたいユイとのコントラストは明らかであり、そのタイミングだからこそ『歌が良かったから、キミは東京に行ける』と水口は告げたかったのではないでしょうか」(前出・テレビ誌ライター)
本作「あまちゃん」のファンからは“神回”との呼び声も高い第53回。果たしてアキとユイの運命はどうなっていくのか。その行く末を知るファンにとっても、水口の行動は実に印象深かったことだろう。