これもひとつの伏線回収だったのかもしれない。
7月10日に再放送されたNHK連続テレビ小説「あまちゃん」第85回では、GMT6のマネージャーを務める水口が6人のメンバーたちを琥珀に例える場面があった。そんな水口が持っている琥珀に、多くの視聴者が首を傾げていたという。
水口は北三陸でローカルアイドルとして活動していたアキ(能年玲奈)とユイ(橋本愛)をスカウトすべく、芸能事務所マネージャーの正体を隠して潜入。考古学専攻と偽り、琥珀職人の勉さん(塩見三省)に弟子入りしていた。
しかし本当は琥珀にまったく興味がなく、虫が封入された貴重な琥珀をゴミ箱に投げ捨てていたほど。ところが今回、合宿所内の自分の部屋に立派な琥珀が置かれていたのである。
北三陸を去るときに水口は、勉さんから「どんなにいい原石もよ、磨がねかったら宝石にはなんねぇ」との言葉を授かっていた。GMT6を育成するなか、その言葉を思い出した水口は「俺はいま6つの原石を持ってるんだなって」と語りつつ、「それを勉さんみたいに磨いて磨いて宝石にするのが俺の仕事だなって」と、あらためて勉さんの言葉を噛みしめていたのだった。
「ここでアキが琥珀を手に取ると、視聴者からは《なぜ水口の部屋に琥珀が!?》と疑問の声があがることに。というのも6月12日放送の第61回で北三陸を去るときに、勉さんからもらった琥珀をベンチに置き忘れており、勉さんが『あの野郎! 忘れていきやがった!』と憤っていたからです」(テレビ誌ライター)
そうなると水口の部屋に琥珀があるのは、よもやの設定ミスなのだろうか。そんな疑念を多くの視聴者が抱くなか、実はその琥珀が伏線回収になっていたというのである。
東京に戻った水口は、地元に残ったユイを説得すべく、アキにも黙って北三陸を再訪していた。6月29日放送の第76回では合宿所にて「会いに行ってきたよ、ユイちゃんに」とアキに明かしていたが、実はその場面が伏線になっていたのである。
「その場面、よく見ると水口が布で琥珀を磨いているのが分かります。おそらく勉さんからあらためてもらったもののようですが、北三陸の回想シーンに勉さんが登場しなかったこともあり、琥珀の存在に気が付かなかった人も少なくなかったようです。これほどうっすらとした伏線もきっちりと回収するとは、脚本の細やかさには感心させられますね」(前出・テレビ誌ライター)
水口が手にしている琥珀は、北三陸駅に置き忘れていったものよりも明らかに大きくなっていた。口では水口を破門していた勉さんだが、心の中では未だに弟子として可愛がっている。一塊の琥珀には、そんな思いまでこもっていたようだ。