どうやら本作の制作陣にはアイドルヲタクが潜んでいるのかもしれない。
7月11日放送のNHK連続テレビ小説「らんまん」第72回では、主人公の万太郎(神木隆之介)と妻の寿恵子(浜辺美波)が大畑印刷所を訪問。職人たちと一緒にうどんをご馳走になる場面があった。そこで寿恵子がアイドルさながらのファンサービスを発揮していたという。
うどんを真ん中に輪になって座るなか、印刷所の一人娘である佳代(田村芽実)が「ちょっとそこ、やめて!」と乱入。寿恵子のことを「私の天女様」と呼ぶほどに憧れている佳代は、職人と寿恵子が隣同士に座っていることが我慢ならないようだ。
ここで職人の前田(阿部亮平)が「お嬢さんがお寿恵さんの隣に座りゃいいでしょ?」と促すと、佳代は「じゃあ…座る」とちゃっかり寿恵子の隣を確保。デレ顔で「天女♪」と声をかけ、寿恵子が佳代に微笑みかけると「微笑みもらった!」とすっかり舞いあがっていたのである。
「佳代の振る舞いは、推しのアイドルに対するTO(トップオタ)の態度さながら。推しの真正面に立つことを“ゼロポジ”と言いますが、この食卓で寿恵子の隣に座るのもまさにゼロポジでしょう。しかも推しに直接微笑みかけられたのは、いわゆる“爆レス”をもらったも同然。ヲタとしては無上の喜びを感じていたに違いありません」(アイドル誌ライター)
それにしてもなぜ、佳代はそれほどまでに寿恵子に憧れているのか。この演出の陰には、佳代を演じる田村の“前世”が大きく影響しているというのである。
現在はミュージカルを中心に女優として活動している田村だが、アイドル好きにとってはハロプロのアイドルグループ「スマイレージ」で活動していたイメージが強いもの。2016年5月には日本武道館で卒業コンサートを開催したほどの人気アイドルだったのである。
元ハロプロメンバーが朝ドラに出演するのは、2016年前期の「とと姉ちゃん」にヒロインの先輩役で出演した真野恵里菜以来、二人目。ハロプログループの元メンバーとしては田村が初めてという快挙だ。
「一方でハロプロ卒業からすでに7年も経っていることから、田村に関しては元アイドルというより、現役のミュージカル女優というイメージで捉えているファンも多いはず。それが今回、寿恵子を相手にアイドルヲタの所作を存分に発揮したのは、あえて田村にヲタ役をやらせたかった制作側の狙いだったのではないでしょうか」(前出・アイドル誌ライター)
アイドルのようにあがめられた寿恵子を演じている浜辺は、アイドル経験こそないものの、2019年8月に放送されたドラマ「ピュア! ~一日アイドル署長の事件簿~」(NHK)では売れない腹黒アイドルの黒薔薇純子で主役を務めていた。その時に見せた万全のアイドルぶりは、ファンの間では語り草だ。
もしや「らんまん」の制作陣に、同ドラマに関わっていたスタッフがいるのではないか。主人公の万太郎に勝るとも劣らない存在感を発揮しているヒロインの寿恵子には、今後もアイドル的な活躍が期待されそうだ。