中古車販売会社「ビッグモーター」の不正請求問題を巡って、同社のCMに出演している俳優の佐藤隆太に降板の可能性が取りざたされている。7月19日には佐藤側がCMキャラクターの契約を解除する方向で協議していると報じられた。
この報道を巡ってネット上では「損害賠償」が話題に。CMの出演者が不祥事をしでかした場合なら、出演契約を解除されたうえで損害賠償を請求されるケースが珍しくないからだ。
今回の件に関しては、ビッグモーターのCMに出演していることで佐藤のイメージが下がる恐れが考えられる。それなら佐藤側が損害賠償を請求してもよさそうなものだが、実際にはどうなのだろうか。
「今回はおそらく、両者合意の上で佐藤のCMキャラクター契約が終了することで決着しそうです。その際に佐藤側が損害賠償を請求することはなく、途中降板ながら契約金や出演料の返還はナシという決着になる可能性が高い。その理由は両者が交わしている出演契約書にあります」(業界関係者)
佐藤側とビッグモーターで交わしている契約書の詳細は不明ながら、業界における標準的な契約が交わされている可能性が高い。その場合、出演者の佐藤側からクライアントのビッグモーター側に対して損害賠償を請求することはできないというのだ。
出演契約書には損害賠償に関する項目が必ず入っているもの。その項目では出演者側が商品やクライアント企業の信用を失墜させたり、出演者側の都合で出演継続ができなくなったケースが定められていることが多い。
いずれのケースでも、想定されているのは「出演者側の不祥事」であり、クライアント側の不祥事が契約書に定められているケースはほとんどないという。それゆえ佐藤側が契約書を根拠に、損害賠償を請求することは難しいというのだ。
そうなるとクライアント側が何かしらの不祥事をしでかした場合に、出演者側は何の対応もできないのだろうか?
「契約書にはたいてい『信義則』に関する項目が含まれています。これは民法第1条第2項の『信義に従い誠実に行わなければならない』に即したもので、信義則に反する行為があった場合には両者で協議して解決するという定めです。佐藤側はおそらくこの項目を根拠に、契約の解除を申し入れることになるでしょう」(前出・業界関係者)
今回の一件を端緒として今後の出演契約書では、クライアント側の不祥事による出演者側の損害について、項目を定める動きが出てくる可能性もありそうだ。