2013年上期のNHK連続テレビ小説「あまちゃん」第96話が7月22日に再放送され、主人公・天野アキ(能年玲奈)が付き人を務める女優・鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)の歌手デビュー作品「潮騒のメモリー」を、アキの母・春子(小泉今日子)が“影武者”として歌っていた詳細が語られた。
1986(昭和61)年、映画デビュー作品「潮騒のメモリー」が大ヒットし、同名主題歌もヒットさせた鈴鹿。
「鈴鹿は音痴という設定で、シングルは若かりし日の春子(有村架純)が影武者としてレコーディングしていました。当初は歌番組で歌唱することを拒否していた鈴鹿ですが、生放送の『夜のベストヒットテン』で歌うと言い出し、マネージャーの荒巻太(古田新太)は頭を抱えてしまいます。後年、アキに対し鈴鹿は『私ダメなの、バレちゃうの。合わせらんないの』と、口パクは無理と述懐するシーンがありましたからね。生歌は披露させられない、かといって口パクも難しい…そんな状況で荒巻が取った方法は、生放送で歌う鈴鹿の口に合わせ、別室の春子が歌った音声を電波に乗せるという手法。『逆口パク』とでも言いましょうか(笑)。この方法が上手くいったのが功を奏したのか、鈴鹿は女優としてだけではなく歌手としても評価され、2枚目以降のシングルもヒットしたというわけなんです」(テレビ誌ライター)
ちなみに、鈴鹿の2ndシングルは昭和61年夏に発売された「縦笛の天使」で、3週連続1位、3rdシングル「Don感ガール」は惜しくも1位を逃したが、B面のバラード「私を湖畔に連れてって」は翌年の春の甲子園の入場行進曲に選ばれたと、ナレーションによる説明が入っていた。このあたりは実際に薬師丸ひろ子の歌手としての足跡をトレースしているようだ。
音楽ライターが解説する。
「薬師丸さんの81(昭和56)年のデビューシングル『セーラー服と機関銃』は言わずと知れた彼女が主演した同名映画の主題歌で、オリコン週間シングルチャートで見事1位を獲得。大学受験のための休業をはさんでリリースした83年の2ndシングル『探偵物語』も1位、84年の3rdシングル『メイン・テーマ』は惜しくも2位止まりでした。鈴鹿の3枚目が2位だったのは、彼女を演じる薬師丸を超えないという配慮なのでしょうか(笑)。なお、B面が甲子園入場行進曲という設定ですが、薬師丸は入場行進曲は歌っていません。ちなみに、実際の86年の行進曲である岩崎良美の『青春』は、岩崎のシングル『愛がひとりぼっち』のB面ですので、B面というところだけトレースしたのかもしれません」
このように、歌手としての実績は鈴鹿と薬師丸でほぼ同じ。相違点と言えば、薬師丸は鈴鹿と違い歌唱力が抜群に高かったということだろう。
さらに言えば、映画「セーラー服と機関銃」は薬師丸にとってすでに5本目の映画作品で、主演作としても3本目。とっくに人気抜群の映画女優だったのである。
(石見剣)