石原さとみがヒロインを務めるドラマ「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」(日本テレビ系)の影響で、校閲という仕事の注目度が高まっている。ネット書店では「校閲入門」などの書籍が次々と売り切れ、ニュースサイトには「あんな校正部員はありえない」といった批判記事が目白押しだ。そのなかで「あの人を思い出した」と言われる伝説の校閲部員がいるという。大手出版社の契約社員が語る。
「ドラマでは石原が、節約主婦の提案する手作りグッズを自分でも作ってみるシーンがあり、『あんな校閲部員はいない』と主張する記事もありますが、そういう人は現実にいるんです! 私がDIY関連の書籍を担当した時、月曜日に出社したら真っ赤に校正されたゲラが置いてあり、『ここに載っているグッズ、土日で全部作ってみました』と書いてあったのです。その“校閲おばさん”は20個以上ものグッズを組み立てており、その仕事ぶりには恐怖心すら覚えたほどです」
だが、校閲おばさんの仕事ぶりは実に的確で、「ネジ止めはこの位置ではない」など、間違っている箇所をいくつも指摘。そのためイラストの書き換えも発生したそうだが、間違った組立図を載せるよりははるかにマシだろう。
「校閲部の入れた赤字を反映するかどうかは編集者の判断ですが、その校閲おばさんに限っては、一切スルーしてはいけないという暗黙のルールがあったほど。うっかり見過ごしたりすると、再校(2回目の校正)でさらに大きな文字で赤字を入れられるので、編集者は緊張感でピリピリしていましたね」(前出・出版社契約社員)
そんな伝説的な存在がいる一方で、出版社によっては校閲部を子会社に移管し、事務的なやり取りに徹しているところもある。「校閲ガール」に描かれている古風な校閲部には、懐かしさを感じる出版関係者も少なくないようだ。
(白根麻子)