夏ばっぱが一度だけ心を許した相手は、超大物歌手だった! 8月14日に再放送されたNHK連続テレビ小説「あまちゃん」第115回では、ヒロイン・アキ(能年玲奈)の祖母である夏(宮本信子)が、北三陸市で歌謡ショーを開催した橋幸夫(演・清水良太郎)に花束を渡す場面が描かれた。
当時19歳だった夏(徳永えり)は漁業組合婦人部の代表として、海女の衣装である絣半纏で登場。当時、すでに大スターだった橋に「お嫁さんにしたいくらいだ」と声を掛けられ、会場からはヤンヤの喝さいだ。
橋は、吉永小百合とのデュエットで第4回日本レコード大賞を受賞した代表曲の「いつでも夢を」を、夏と一緒に歌おうと提案。緊張していた夏も途中からデュエットし、歌謡ショーを現場で見ていた琥珀職人の勉さん(塩見三省)は「あれからしばらくのあいだ夏さん、この界隈でアイドルだったでしょう」と回顧していたのである。
「スナック梨明日に集ったいつもの面々は橋幸夫が昭和39年(1964年)に北三陸で歌謡ショーを開いたとは信じられない様子。なにしろ当時の橋は昭和35年(1960年)に17歳で紅白歌合戦に初出場し、17回連続出場を果たしたスーパースターでしたからね。ただ当時の歌謡界では大物歌手も日本全国を回って営業していましたから、岩手の地方都市に来る可能性もゼロではありませんでした」(芸能ライター)
ただ一部の視聴者は、なぜ歌謡ショーの開催が昭和39年だったのかに疑問を抱いていたようだ。
夏は19歳になっているが、娘の春子(小泉今日子/有村架純)がアイドルを目指して家出したのは高2だった17歳の時。孫のアキも高3の18歳で上京し、「GMT5」に加入していた。
それなら三代続くアイドル母娘の出発点となる夏も、17~18歳で登場しそうなもの。それがなぜ夏は高校を卒業した19歳になってから物語に登場したのだろうか。実はそのヒントが作中のセリフで明かされていたという。
「歌謡ショーの司会者(マキタスポーツ)は夏のことを『袖が浜の天野夏さん』と紹介。この時点ですでに夏は忠兵衛(蟹江敬三)と結婚していたのです。物語上は三代にわたるアイドル母娘が全員“天野姓”のほうが都合が良いワケであり、そのためには夏が高校を卒業している必要がありました。この2年後、昭和41年(1966年)に春子が誕生しており、天野家のアイドルは夏から春子へと継承されていたのです」(前出・芸能ライター)
天野という姓はもちろん「海女の」に掛けたもの。旧姓の不明な夏が「海女の夏」であるためには、若き日の姿も結婚後である必要があった。そういった細かいディテールへのこだわりもまた「あまちゃん」の奥深さを担保しているのではないだろうか。