価値があるからこそ、手を付けるわけにはいかなかったようだ。
8月22日放送のNHK連続テレビ小説「らんまん」第102回では、ラストシーンで驚きの展開が。主人公の槙野万太郎(神木隆之介)を支える妻の寿恵子(浜辺美波)が、芸者になる決心をしたように見える場面で終わっていた。
植物学に身を捧げつつも生活能力のない万太郎。それゆえ寿恵子が「実はいま我が家ギリッギリなんです」と明かしたように、槙野家の家計はいつも火の車だ。作中では寿恵子が自宅の金銭出納帳を眺める姿があり、そこには質屋などからの借り入れが並んでいた。数十円の仮入れが並んでおり、総額は優に数百円(現在の数百万円)になるだろう。
だが実際のところ、槙野家にはその借金をきれいに清算できるだけの資産があるというのだ。
「前回、万太郎が師事していた帝国大学の田邊元教授が鎌倉で溺死していたことが発覚。今回、未亡人となった聡子(中田青渚)が槙野家を訪れ、田邊元教授の遺言により、すべての蔵書が万太郎に遺贈されることとなりました。その蔵書にはおそらく数百円どころか、数千円の価値があることでしょう」(テレビ誌ライター)
なにしろ田邊元教授は帝大に奉職するばかりか、女学校の校長なども併任し、俸給は月額三千円にも上っていたという。そんな田邊元教授の蔵書がどれほどの価値があるのか、万太郎はよくわかっているはずだ。
だが一方で妻の寿恵子は、その蔵書は絶対に売りに出すことができないことも知っていた。自宅に数千円もの価値が眠っていながら、それに手を付けることは一切できないのである。
「借金を返すことよりも大事なものがある。以前から万太郎の植物学研究を支えてきた寿恵子ですが、田邊元教授の蔵書を手に入れた今、その想いはますます強くなったのでしょう。だからこそ、以前から心の底に秘めていた『芸者として働く』という裏技を実行に移せたのではないでしょうか」(前出・テレビ誌ライター)
寿恵子の叔母にあたるみえは、政府御用達の料理屋「巳佐登」の女将。何人もの芸者を雇っている経営者だ。以前からみえは寿恵子が母の後を継いで芸者として大成することを望んでいたが、ついに寿恵子のほうから自分のもとを訪れてきたのである。
果たして寿恵子は本当に芸者になるのか。それとも彼女なりの狙いがあるのか。いずれにしても彼女を叔母のもとへ走らせたきっかけが、亡き田邊元教授の遺志にあったことは間違いなさそうだ。