まるで現在放送中のドラマのようだ。そう感じた視聴者も多かったことだろう。
9月11日に再放送されたNHK連続テレビ小説「あまちゃん」第139回では、東日本大震災で被災した北三陸市観光協会に主要人物が勢ぞろい。震災後で初めての会議が催された。
線路などに大きな被害を受けた北三陸鉄道では、復興に80億円が必要との試算が。袖が浜名物の海女に関しては7月1日に海開きしたものの、ヒロインのアキ(能年玲奈)が見たのは瓦礫に覆われウニがひとつもなくなってしまった海中の様子だった。
「漁協の組合長(でんでん)によると、例年の水揚げの80%にあたるウニが津波で打ち上げられてしまったとのこと。浜に大量のウニが散乱している写真はおそらく、震災後に実際に撮影されたものでしょう。震災では津波に襲われた陸地のみならず、海中すらも大きな被害を受けていたのです」(テレビ誌ライター)
北三陸市が受けた被害は地震や津波によるものだけではなかった。震災後の復興を大きく妨げたのは、誤解や悪意に基づいた「風評被害」だったのである。
会議に参加していた弥生(渡辺えり)は、「やっと獲ってもよお、震災の影響でよお、『東北で獲れる海産物は危ねえんでねえか』って。ふ…ふう」と説明。北三陸駅長の大吉(杉本哲太)が「風評被害か?」とアシストすると、弥生は「ふ、ふざけんな!」と絶叫だ。
続けて弥生は「何度も何度も水質調査して、安全だって証明されたがらオラたちは潜っているっていうのによぉ!」と慟哭。その嘆きは決して、10年前の被災時に留まらないというのである。
「この8月24日には福島第一原発にて処理水の海洋放出を開始。IAEAをはじめ世界中の専門機関から安全性にお墨付きをもらっているにも関わらず、中国は『核汚染水』とのプロバガンダを世界に発信し続けています。それに加えて国内でも科学を無視して『汚染水』呼ばわりする政治家や活動家が続出。地元への風評被害を助長している残念な現実があるのです」(前出・テレビ誌ライター)
朝ドラでは岩手、処理水では福島と場所こそ違えども、いずれも東北地方をターゲットとした風評加害であることに変わりはない。今回の「あまちゃん」を巡っても、SNS上では「汚染水」とのデマを触れ回る姿が散見される有様だ。
「今回の放送に視聴者からは《風評被害は終わっていない》《このタイミングでの再放送には意味がある》といった声が続出。弥生の絶叫に反応して《風評被害、ふざけんな!》との怒りを表明する人も少なくありません。『あまちゃん』の再放送は、風評加害者によるデマがどれほど被災地に迷惑を掛けているのかを可視化している点で、大きな意義があると言えるでしょう」(前出・テレビ誌ライター)
北三陸市のモデルである岩手・久慈市では7月1日、海開きを行い、北限の海女たちがウニ漁を実施。新型コロナ禍明けで戻ってきた観光客が、採れたてのウニに舌鼓を打っていた。
震災から10年が経ち、ウニも観光客も戻ってきた被災地に広がる笑顔。「あまちゃん」の再放送はそんな地元の活況に、さらなる彩りを加えていることだろう。