もっとじっくり観たかったのに…。視聴者ももったいなく思っていたようだ。
12月13日放送のNHK連続テレビ小説「ブギウギ」第53回では、ヒロインのスズ子(趣里)が大阪の実家に久しぶりの帰省を果たす場面があった。銭湯・はな湯の面々が久しぶりに登場し、視聴者も沸いていたが、その一方では慌ただしい描写に首を傾げる向きもあったという。
自身の楽団を率いて神戸で公演した帰りに、大阪に立ち寄ったスズ子。ゴンベイが継いだはな湯には占い師や八百屋など物語の初期におなじみだった人物たちが集まっていた。スズ子の帰省を喜ぶ彼らの姿は、スズ子が大阪出身であることをあらためて印象付けていたようだ。
その足でスズ子は、自身の古巣である梅丸少女歌劇団を訪問。そこには同期生の桜庭和希(片山友希)とリリー白川(清水くるみ)、そして東京で一緒に暮らしていた秋山美月(伊原六花)が懐かしの練習着姿で稽古していた。久しぶりの再会を果たした4人は円陣を組み、「強く、逞しく、泥臭く、そして艶やかに!」の掛け声で固い絆を示したのだった。
「この円陣には視聴者も大喜び。時代が戦中へと移り変わり、暗い雰囲気が覆いつくすなか、久しぶりの明るいシーンに物語も華やいだことでしょう。ただ、せっかく帰省したのですから、できればスズ子が梅丸の仲間たちと語らう場面をもっと観たかった視聴者も多かったはず。ところが梅丸の訪問シーンはわずか3分強で終わってしまい、次の場面ではもう東京に戻っていたのです」(テレビ誌ライター)
ずいぶんと急な展開のなか、愛知で知り合った大学生の村山愛助(水上恒司)が再び登場。スズ子を実家に招待するという積極的なアプローチを見せ、いよいよ恋バナが進展するのかと視聴者も期待したことだろう。
ただ、大阪への帰省と同期生たちとの邂逅、そして愛助との再会から自宅に誘われるまでの流れを一挙に見せたのは、いささか詰め込み過ぎではないだろうか。この慌ただしすぎる展開に、疑念を抱く視聴者もいたというのである。
「一部の視聴者からは、本当は梅丸のシーンがもっと長かったのではという疑問の声があがっています。そうであればなぜ、梅丸で過ごした場面がこれほど短かったのか。そこには世間を騒がせている問題の影響があるのでは、と裏読みする視聴者もいるようですね」(前出・テレビ誌ライター)
その問題とは、宝塚歌劇団を巡る騒動だ。劇団員が自死した陰に劇団内のいじめがあったと噂されており、劇団側が内部調査を行うも、その発表が結論ありきだと世間から猛批判されているのは記憶に新しいところだ。
梅丸少女歌劇団は宝塚ではなく、そのライバルであるOSK日本歌劇団がモデル。ただ外形的には似たような女子専門の歌劇団であり、同じ関西に本拠地を置くとあって、梅丸から宝塚を想起するのも無理はないだろう。
「作中には『衣装の調達も大変』とか『自前の衣装』といったセリフが。その言葉に、宝塚ではアクセサリーなどを自腹で用意させているとのエピソードを思い出した向きもあるようです。それゆえ梅丸の場面が長くなるほど宝塚を想起する視聴者が増えかねず、あえて梅丸のシーンを短くカットした可能性があると怪しむ声があがっても不思議ではありません」(前出・テレビ誌ライター)
朝ドラは数カ月も前から制作されており、間際での編集は難しいもの。それでも宝塚問題の影響を感じずにはいられない視聴者も少なくなかったようだ。