言ってることとやってることが違うよね…。視聴者からそんな声もあがっているようだ。
1月18日放送のNHK連続テレビ小説「ブギウギ」第75回では、喜劇王・タナケンの舞台稽古に臨むヒロインのスズ子(趣里)が覚醒。台本を無視して大阪弁でまくしたてる姿が映し出された。
共演者はセリフを勝手に改変したスズ子に激高したが、当のタナケン(生瀬勝久)は「面白けりゃいいです」とピシャリ。スズ子が「ホンマに大丈夫でっか?」と訊ねると、タナケンは「僕を誰だと思ってるんだい? 喜劇王タナケンだよ」と啖呵を切ってみせたのである。
続けてタナケンは「幕が上がりゃあ舞台は役者のものだ。玄人も素人も関係ない。好きにやりゃあいい」とキッパリ。そのうえで「何をやっても僕が全部受けてあげるよ」との決めゼリフで、スズ子を感動させたのだった。
「この言葉には視聴者からも《タナケンかっこいい!》《感動して泣いてしまった》といった絶賛が続出。それまでスズ子の演技に『どうだろうねえ』と冷淡な態度でしたが、エンターテイナーとしての魅力を発揮し始めたスズ子に手ごたえを感じたのでしょう」(テレビ誌ライター)
登場人物の態度がいきなり変わるのは、ドラマでは定番の演出。タナケンが「僕が全部受けてあげるよ」と告げた姿には、さすが喜劇王と感心した視聴者も多かったことだろう。
だが一方でそのセリフに違和感を抱く視聴者もいたという。なぜならタナケンはその言葉に反する態度を取ってきたからだというのだ。
「前日の第74回でタナケンは、稽古の最中に演出家役の役者を交代させていました。しかし《何をやっても僕が全部受けてあげるよ》という姿勢なのであれば、演技の巧拙を理由に交代させるのはおかしな話。脚本が破綻していると指摘する視聴者がいるのも無理はありません」(前出・テレビ誌ライター)
ただタナケン自身の「面白けりゃいい」という姿勢にブレはないようだ。それは面白くないものには容赦なくダメ出しすることであり、演出家役の交代はあくまで、舞台をより面白くするための工夫ではないだろうか。
その姿勢に従えば、スズ子をクビにすることもありえたはず。だがタナケンは当初から、スズ子に対して期待するところがあったのかもしれない。
「第73回の初稽古でタナケンは、スズ子を一瞥して『どうもしっくりこない』とつぶやいていました。それに対して今回、スズ子が『ワテはワテだす!』と大阪弁でまくしたてると、一転して『面白いね。僕もなんかできそうだから』と手ごたえを感じていたのです。おそらくタナケンは、標準語のセリフでは自分らしさを発揮できないスズ子に違和感を抱いていた様子。本当はもっとできるはずだという期待を抱いていたように思えます」(前出・テレビ誌ライター)
どうやらスズ子に対する態度は最初から一貫していたタナケン。だが分かりづらさを感じる視聴者がいることも否めず、一連の脚本に対して疑問の声があがるのもまた、無理はなさそうだ。