子育ての経験者は一人もいないのか…。そんな呆れ声が飛び交っているようだ。
2月13日放送のNHK連続テレビ小説「ブギウギ」第93回では、ヒロイン・スズ子(趣里)の自宅を後輩の秋山美月(伊原六花)が訪問。スズ子の記事が掲載されたゴシップ誌の眞相婦人を取り出し、「これ見て、やる気がよみがえりました!」と笑顔を見せる場面があった。
その記事には「コブ付きの歌姫!」との見出しが踊っており、スズ子は「酷い書き方やろう? 腹ボテって書かれたこともあるし」と苦虫を嚙み潰したような表情に。だが秋山は、それでも歌を続けている姿に力づけられたと明かし、スズ子もまんざらでもない様子だ。
ゴシップ記事が人に力を与えることもある。そんな意外性を示すエピソードだったが、秋山が読んだ記事にはとんでもない「考証ミス」が潜んでいたという。それは現実には絶対にありえないレベルのミスだという。
同記事では舞台「ジャズカルメン」の公演中にスズ子の妊娠が発覚し、関係者が心配したと説明。さらに「しかし、相手は依然として明かされておらず、戦争で生き別れたのではないかという噂が関係者の中で囁かれている」と書かれていた。どうやらゴシップ誌の記者・鮫島(みのすけ)は、愛子の父親が村山興業の御曹司・愛助であることを掴んでいなかったようだ。
「スズ子のモデルである笠置シヅ子の場合、吉本興業の御曹司である吉本穎右氏との交際がゴシップ誌で格好のネタとなっていました。それが作中では愛助氏の存在がマスコミに知られていないと脚色されています。とはいえこの程度の脚色は、ドラマの演出としてはあり得る話。しかし今回のゴシップ記事には演出という言葉ではフォローしきれない致命的なミスがあったのです」(芸能ライター)
そのミスとは時系列の問題だ。スズ子の娘である愛子は昭和22年の6月に生まれている。そうなると愛子の父親(愛助)は昭和21年の夏ごろに、スズ子と愛の営みをもった計算となるはずだ。
ところが記事では父親について「戦争で生き別れた」と記述。その言葉に従えばスズ子は、昭和20年8月15日の終戦以前から2年間にもわたって妊娠していた計算になるではないか。
「そもそも作中では昭和22年になってから、スズ子の妊娠が発覚。そのタイミングで『父親とは戦争で生き別れた』なんて噂を立てる人なんているはずもありません。いくら眞相婦人が三流ゴシップ誌だからといって、これほどありえない『噂』を記事にするはずもなく、制作側のいい加減な仕事ぶりを示すこととなりました」(前出・芸能ライター)
本作では赤ん坊の描写を巡っても、視聴者から<月齢が合わない>といった批判が寄せられている。それこそ愛子は3カ月でも10カ月でも見た目が変わらず、同じ赤ちゃんモデルを起用している様子。しかし子育て経験者であれば、3カ月と10カ月ではまったく成長度合いが違うことを実感しているというものだ。
このように赤ちゃんの月齢に無頓着な制作陣だからこそ、妊娠が2年にわたるという「噂」の不自然さにも気づかないのだろう。当のスズ子自身、戦前と戦後の時代差がビジュアルに反映されていない様子。この調子で時系列に無頓着なまま話が進んでいくのかと、視聴者もますます心配を募らせているようだ。「