会場に詰め掛けたファン全員が、その景色を忘れないことだろう。
オードリーが、お笑い芸人として1989年のとんねるず以来となる二組目の東京ドーム公演を成功させた。2月18日に開催された「オードリーのオールナイトニッポン in 東京ドーム」では全国約200カ所のライブビューイングとオンライン生配信を含めて16万人ものファンが観覧。2月にして早くも「今年一番の思い出」との声が続出している。
会場は文字通りの超満員となり、アリーナからスタンドまでぎっしりと埋め尽くされることに。空席らしい空席はほぼ見当たらず、プラチナチケットを手に入れたリトルトゥース(「オードリーのオールナイトニッポン」のリスナーの愛称)たちが、この公演に抱いた熱い想いををまざまざと示していた。
公演後のSNSではハッシュタグ「#オードリーANN東京ドーム」がXの世界トレンドで1位に。印象的だったのは公演の内容に不満を抱くファンがほとんど見当たらなかったことだ。なかでも注目したいのは「ステージ裏体感席」を絶賛する声だったという。
ステージ裏体感席とは、東京ドームなど大型会場のライブではおなじみの席種。今回のチケット販売時には「座席の位置や機材の影響で、ステージおよび演出、出演者が全く見えないお席」と明記されていた。アリーナ席やスタンド席よりは安いとはいえ7500円はなかなかのお値段で、同チケットを手に入れたファンからは<雰囲気だけでも楽しめれば><その場にいることが大事だから…>と、自分を納得させる声が聞こえていたものだ。
ところがステージ裏組のリトルトゥースがいざ東京ドームに入ってみると、事前に抱いていた淡い期待は良い意味で裏切られたという。それどころか<実は神席じゃないか!?>といった喜びの声さえあがっていたというのだ。
「どうやら主催者側は、東京ドームの外野スタンド全体を『ステージ裏体感席』に設定していたようです。そのためファウルポールに近いエリアからはステージがしっかり見えており、《全然見えるじゃん!》という喜びが続出。一方で事前の案内通りにステージがまったく見えないエリアもありましたが、その席こそむしろ特等席だと感じるリトルトゥースが多かったのです」(東京ドーム公演に参戦した芸能ライター)
多くの公演で「ステージ裏席」は、ステージと客席を仕切る暗幕の裏側に設置されることが多い。そのためイベント自体を肉眼で見ることはまったくできず、音声だけを楽しめる文字通りの「音席」になっていることは珍しくない。
それに対しオードリーの公演では巨大なステージセットは存在するものの、その両側が幕などで仕切られておらず、ステージ裏体感席からでも東京ドーム全体の様子を眺めることができた。どの席からも満員の観客に埋め尽くされたスタンド席を見渡すことができ、それだけでも「この会場にいる!」という臨場感はバッチリだ。
しかも完全にステージが見えない席からは、ステージ裏でスタッフが働いている様子はもちろん、出演者の出ハケが丸ごと見えることに。むしろ正規の席からは絶対に見えることのない「裏側」の様子が手に取るように味わえたのである。
「オードリーの春日俊彰と若林正恭は出ハケするたびに、ステージ裏観客席に向かって手を振るなど熱心にファンアピールを行っていました。スタンドとの距離も近く、二人の表情が手に取るように分かることもあり、ファンの満足度は相当に高かったのです。ほぼ真裏にあたるエリアからは、ステージに向かって歩き出すオードリーの後姿をばっちり見ることができ、SNSでは《あの背中 一生の宝物にしましょう》といった感動の声もあがっていたほどでした」(前出・芸能ライター)
オードリーの二人はトーク中にもステージ裏体感席について触れていたほか、チケットを入手できずライブビューイングやオンライン配信で視聴しているファンを気遣う言葉もあり、今回の公演を観ているファンすべてに対する万全の配慮が行き届いていたのである。
トロッコで場内を一周した際に若林は、手首に付けたラバーバンドを何度も示していた。それはライブビューイングの観客に配布されたのと同じものであり、スクリーンを通して本公演を観ているファンへの配慮だった。こういった姿勢は、この公演を観てくれたファンを誰一人として取り残さないというオードリーの熱い気持ちの表れだったに違いないだろう。