もはやご都合主義をすっ飛ばして、謎展開でしかないようだ。
2月22日放送のNHK連続テレビ小説「ブギウギ」第100回では、ヒロイン・スズ子(趣里)の自宅に大野晶子(木野花)と名乗る初老の女性が来訪。茨田りつ子(菊地凛子)の紹介で来た家政婦だという。
スズ子は一人娘の愛子を自分の手で育てることにこだわるも、仕事場にも愛子を連れていくことで、周りに迷惑をかけまくっていた。その様子を見かねたりつ子が、同郷の青森出身である晶子を送り込んだのである。
「りつ子のお節介が気になる視聴者もいたものの、自分の娘を郷里の母親に預けっぱなしなことを申し訳なく感じているりつ子としては、一人で娘を育てるスズ子の役に立ちたいと思うのも無理のないところ。むしろ問題はスズ子を取り巻く環境にあったのは間違いないでしょう」(テレビ誌ライター)
これまで愛子の世話は映画の制作陣や、マネージャーで初老男性の山下(近藤芳正)にお願いしていたスズ子。その姿に明らかな違和感を抱いていた視聴者は少なくないようだ。
というのも、歌でも映画でも人気を博すスズ子は時代を代表する大スターのはず。本来ならマネージメント側が総力を挙げて身の回りを世話するはずで、撮影現場では専属の子守を雇ってしかるべきだろう。
また、スズ子は自分の手で愛子を育てることにこだわっているものの、炊事や洗濯もすべて自分でこなすことまでは主張していないはずだ。
しかも彼女は育ての親だったツヤ(水川あさみ)を実の母のように慕っていたが、そのツヤにしても家業の銭湯に関しては住み込み従業員のゴンベエ(宇野祥平)を頼りにしていた。それゆえスズ子が身の回りの一切を自分でこなそうとしている姿には、確固たる理由が見当たらないのである。
「普通に考えたら山下が、せめて炊事や洗濯だけでも任せられる家政婦を雇うはず。昼間のスズ子は映画撮影や歌の練習で多忙なのですから、自宅に帰ったら温かいゴハンが待っている生活がベストでしょう。そもそも2歳の娘を職場に連れていく母親が、帰宅後に娘を待たせたまま料理を始めるものでしょうか。食材の買い出しシーンもありませんし、福来スズ子うんぬん以前の問題として、彼女の生活は明らかに破綻しているのです」(前出・テレビ誌ライター)
家政婦として来た晶子は、ずいぶん前に愛子が破った障子を直そうとするも、スズ子に「明日からで結構だす」と断られていた。この場面で視聴者は、なぜ障子が破れたままで放置されていたのかを理解できたことだろう。
しかし、2歳の娘に無理やりニンジンを食べさせようと“食育”に熱心なスズ子が、障子は放置しっぱなしというのはあまりにもバランス感覚に欠けるというもの。結局のところ破れた障子は、家政婦の必要性を強めるための舞台装置に過ぎないということか。
「本作には様々な視点から批判が寄せられていますが、なかでも強く指摘されているのはリアリティの欠如です。福来スズ子というスターがコンサートや映画撮影で活躍する場面だけは熱心に描くものの、それ以外の生活についてはあまりにも浮世離れしており、とても実在の人物をモデルにした作品とは思えません。今回の家政婦にしても、このタイミングで登場させることが最初から決まっているがゆえに、スズ子の日常生活が異常な状態に描かれていたように思えてなりませんね」(前出・テレビ誌ライター)
果たして家政婦の晶子は今後、スズ子にどんな影響を与えるのか。視聴者の間からは、伝説的な人気を誇る名作の「あまちゃん」でメガネ会計ババアを演じた木野花に、とんでも演技をさせないでほしいと心配の声があがっているようだ。