こういうのを観たいんじゃなかったのに…。不満を漏らす視聴者も多いようだ。
3月6日放送のNHK連続テレビ小説「ブギウギ」第109回では、父・亀吉(柳葉敏郎)の危篤を知ったヒロインのスズ子(趣里)が香川に急行。病床の父親を見舞う様子が描かれた。
妻のツヤ(水川あさみ)に先だたれ、その後は東京でスズ子と同居するも、故郷の香川に戻って写真館を開いていた亀吉。元来の明るい性格に加えて写真の腕も良かったそうで、病気になって写真館を閉めるまでは大層繁盛していたという。
亀吉の撮った写真をしまっている倉庫を訪れたスズ子は、弾けるような笑顔の家族写真を発見。亀吉が場を盛り上げながら撮影する姿を想像してはほっこりしていた。ここで別のアルバムを手に取ると、そこにはなぜか水着姿でほほ笑む何人もの女性の姿が。どうやら亀吉は個人の趣味として水着グラビアを撮っていたようだ。
「それらの写真に『なんやこれ!?』と困惑するスズ子。もとよりハイカラな亀吉ゆえ水着グラビアを撮っていたのは納得できるところですが、視聴者にとってみればなぜこのタイミングでこのネタをぶっこんで来たのか、制作側の狙いがまったく見えず、スズ子以上に当惑していたのではないでしょうか」(テレビ誌ライター)
細かいことを言うと、女性たちが着用していた水着には昭和20年代前半には存在していないものもあった。当時は「シマウマ」と呼ばれる縞柄のワンピース水着が主流で、上と下が分かれたセパレート水着など日本国内で着ている例などまずなかったもの。作中の水着は昭和30年代(1955年以降)のデザインとなっており、昭和26年という時代設定には外れているのである。
そういった時代考証の面ではもうひとつ気になることが。それはスズ子が建てた豪邸だ。本作のモデルである笠置シヅ子は作中と同じ昭和25年、東京・世田谷にハリウッドスタイルの豪邸を建設。娘の部屋にはピアノが据え付けられるなど、著名人の長者番付で東京都の2位に入ったという稼ぎっぷりが反映されていた。
その笠置亭には「笠置ガーデン」と呼ばれた広い庭があり、芸能人を招いてのパーティーも開催されていたという。ところが作中のスズ子宅はまあまあ立派な作りではあるものの、なぜか路地の奥まったところにある設定。庭らしきものも見当たらず、正直なところ豪邸感も伝わってこない作りだ。
「この豪邸もそうですし、前日には笠置シヅ子の芸能人生において一大トピックであるアメリカ巡業が、写真数枚で済まされたばかりです。史実にのっとったシーンはコスト削減の手抜きでスルーされ、創作場面ではよく意味の分からない亀吉の趣味が露呈。スズ子は戦後を代表する歌手なのに、ノイズでしかない場面ばかりが目立つ演出に、視聴者は置いてけぼり感を抱かずにはいられないことでしょう」(テレビ誌ライター)
果たして制作陣はスズ子をどんな人物に描きたいのか。放送が残り3週あまりとなってきた時点で、どこにこの物語を着地させたいのか、先行きはますます混迷しているようだ。