いったい誰をモデルにしたドラマなのか? 視聴者の怒りが収まらないのも無理はないようだ。
3月14日放送のNHK連続テレビ小説「ブギウギ」第115回では、ヒロイン・スズ子(趣里)の娘・愛子(このか)を巡る誘拐未遂事件が解決。犯人の小田島(水澤紳吾)が現行犯で逮捕される場面が描かれた。
小田島の息子である一(はじめ=井上一輝)は、愛子と同じ小学校の一学年上。だが父子二人暮らしがあまりにも貧乏なこともあり、学校にはほとんど通っていなかった。その父子が愛子の誕生日パーティーに参加したことから、父親は誘拐を画策。しかし失敗に終わったことで、一は遠い親戚のもとに転校することになったのである。
「この第24週は、月曜日こそ作曲家・羽鳥善一(草彅剛)のパーティーでスズ子がラインダンスを披露する場面があったものの、火曜日以降は誘拐話に終始。母娘の確執を描く一方で、国民的なスター歌手であるスズ子の活躍にはまったく触れないという異例の展開となっています。もとより4カ月に及ぶアメリカ巡業さえ写真数枚で済ませたくらいですから、どうやら制作陣には“スター・スズ子”を真正面から描く気はさらさらないようです」(テレビ誌ライター)
本作はかつての国民的大スターだった笠置シヅ子をモデルとしており、少なくても戦前までの描写はヒロインのスズ子がスターにのし上がっていく軌跡をきっちりと描いていた。
ところが戦中・戦後ではスズ子の恋バナと、娘・愛子の子育てを巡る苦悩ばかりが描かれ、彼女の活躍はろくに描かれないことに。笠置シヅ子はこの時期、美空ひばりとの確執という芸能史に残るエピソードの真っ最中だったが、あえて描かないようにしているのだろうか。
どうやら制作側は歌手・スズ子よりも、恋人であり母親であるスズ子の心情をメインにしたい様子。笠置シヅ子の物語だと思っていた視聴者をガッカリさせているが、今回の作中ではそういった視聴者の神経を逆なでするような描写が目に付いたのである。
「刑事役の内藤剛志はやたらと、自分の娘に関して言及。事件解決後にはスズ子に対して、親というのは子供に対して何でもしてやりたいものと語りつつ、『私も娘にもっとしてやればよかった…』と後悔をにじませる場面がありました。これが実は、人気民放ドラマの設定をまるまるパクっているのです」(前出・テレビ誌ライター)
内藤と言えば刑事ドラマ「警視庁・捜査一課長」(テレビ朝日系)シリーズの主人公・大岩純一役でおなじみ。それゆえ刑事役が完璧にハマっており、観る側に安心感を与える効果はあっただろう。
その大岩刑事は娘を病気で失っており、亡くなった娘のことを気に病むシーンがおなじみの光景だ。すなわち「ブギウギ」にて内藤が娘について悔やむ姿は、「警視庁・捜査一課長」の設定をパクっているのである。
「制作陣はおそらく『警視庁・捜査一課長』をオマージュしたくらいの気持ちでしょう。これで『ブギウギ』が人気作だったら、今回の演出もちょっとしたスパイスに感じられたかもしれません。しかし大スターであるはずのスズ子をやたらとエキセントリックな性格に描き、“趣里の無駄遣い”と評される内容に貶めている現状では、今回のオマージュも単なる悪ふざけにしか見えないというものです」(前出・テレビ誌ライター)
子を持つ親の目線で見ると、スズ子の子育てはあまりにもずさんすぎて、愛子が気の毒になるほど。それを民放のパクリ、ならぬオマージュで覆い隠せるほど、視聴者の目は節穴ではないことに、制作陣は気づくべきではないだろうか。