のん 主演映画「さかなのこ」の名ゼリフに説得力が増した「第16回伊丹十三賞」受賞の理由

 2022年9月に公開されたのん主演映画「さかなのこ」。さかなクンの半生を描いた自叙伝「さかなクンの一魚一会 ~まいにち夢中な人生!~」が原作の映画で、のんはミー坊(のちのさかなクン)を好演。この映画が7月20日にNHK Eテレで地上波初放送された。

 その4日後の24日、第16回伊丹十三賞が発表され、なんとのんが受賞。この賞は2008年に映画監督、エッセイスト、俳優、デザイナー、イラストレーターなど、さまざまな分野で活躍した伊丹さんの偉業を記念して創設されたもの。これまでにタモリ、糸井重里、池上彰、リリー・フランキー、星野源、是枝裕和監督、宮藤官九郎、三谷幸喜らが受賞してきた。

 今回、のんは「俳優、ミュージシャン、映画監督、アーティスト…困難を乗りこえ自由な表現に挑み続ける創作活動に対して授賞が決まった」と、周防正行監督ら選考委員会が公表。ここで注目してほしいのが「困難を乗り越え自由な表現に挑み続ける」というフレーズだ。

 映画「さかなのこ」でのん演じるミー坊は、幼い頃から魚が好き過ぎて、父・ジロウ(三宅弘城)から「周りの子とはちょっと違う」と心配されてきた。しかし母・ミチコ(井川遥)はミー坊のすべてを受け入れ“魚好き”であることを全力で応援。もちろん周りの友だちたちも、そんなミー坊を愛している。

 魚好きのミー坊を思うあまり姿を消してしまうモモ(夏帆)や、恋人より友だちのミー坊を大事にするヒヨ(柳楽優弥)は最たるもので、こんな友だちがいるミー坊が羨ましくてしょうがなくなる。

 なかなか仕事に就けず、もがいていたミー坊に助け舟を出すのも高校時代の友だち=総長(磯村勇人)と籾山(岡山天音)。2人のおかげでミー坊は誰もが知る「さかなクン」になるきっかけをつかみ、映画の終盤でミー坊はヒヨが働くテレビ局の番組に出演し「好きに勝るものなしでギョざいます」とにっこり。完全なる「さかなクン」になるのだ。

 のんは「伊丹十三賞」を受賞したことを「夢のようです」と表現。感謝の言葉とともに「今まで自分のやりたいことを曲げずに無我夢中でやってきました。改めて『貫いていくべきなんだ』ということが胸にすとんと落ちてきて、すさまじい勇気をもらえました」と言い、「この賞に恥じぬよう精進、挑戦をしていきたいと思います」と結んだ。「さかなのこ」はのんの自伝的映画とも言えると思うのだが、いかがだろうか。

(森山いま)

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