製作費300億円、「ミナリ」(2021年)のリー・アイザック・チョンが監督を務め、「ジュラシック・ワールド」(15年)の製作陣が集結して巨大竜巻の恐怖を描いた超大作。1996年の「ツイスター」は世界中で大ヒットした。本作は続編として企画されたが、紆余曲折あって単独作品として28年ぶりに世に出ることになった。
NYで自然災害予測の仕事をするケイト(デイジー・エドガー=ジョーンズ)は、ストームチェイサー(竜巻を追いかけて観測すること)の旧友ハビの助っ人として、故郷のオクラホマに戻ることになった。実はケイトは大学時代、内部に高分子吸収剤をばらまくことで竜巻自体を消す実験に失敗して、恋人を失った苦い経験があった。ケイトはハビに加え、男性インフルエンサーのタイラーと3人でリベンジに挑む─。
車も家も人間も、何もかも巻き上げる竜巻のすさまじい破壊力に圧倒される。デジタルとアナログを組み合わせた映像技術で表現される大自然の驚異に畏怖すら感じる。被災後の街は広大なアナログセットで撮影されたという。これも大予算映画だからこそである。
ヒロインのケイトが、屈強な男たちを引き連れて竜巻を消去することに挑むところが新機軸だ。勝ち気な女性を男2人が追いかける三角関係がイマドキな感じだが、そのドラマの結末が意外だ。クライマックスは3人が巨大竜巻に果敢に特攻し、地面にスパイクを打ち込んで車体を固定して真っ向勝負する。住民たちの最後の希望を背負っての戦いは、見ているこちらも盛り上がる。
現代的な装いで蘇った古典ジャンルの決定版として、中高年のハリウッド映画ファンにぜひ見てほしい。
(8月1日全国公開、配給・ワーナーブラザース映画)
前田有一(まえだ・ゆういち)1972年生まれ、東京都出身。映画評論家。宅建主任者などを経て、現在の仕事に就く。著書「それが映画をダメにする」(玄光社)、「超映画批評」(http://maeda-y.com)など。