韓国映画は「お金をかけたアクションシーンと、笑えるコメディー要素が魅力だ」と個人的に思っている。本作は、この条件を両立させたホラーエンターテインメント。インチキ祈祷師コンビが〝本物の霊〟に出会ってしまうオープニングシーンから大爆笑! 主演は「ベイビー・ブローカー」(2022年)のカン・ドンウォンが務める。
インチキ祈祷師のチョン博士(カン)は助手のインベ(イ・ドンフィ)を薄給でこき使い、遠隔操作で迫力の除霊シーンを演出するなどインチキ儀式を繰り返して金持ちの依頼人を騙していた。
ある日、2人は美しい女性ユギョン(イ・ソム)から「妹に憑いた悪霊を祓ってほしい」と頼まれる。
彼らはいつも通りのインチキ除霊を始めるが、これまで一度も鳴ったことのないチョン博士の鈴が激しく鳴り響く。実はチョンの実家は祈祷師の一族。鈴は「本物の悪霊」にだけに反応する宝物だった─。
詐欺師のチョン博士が、最強の祈祷師の末裔で、悪霊と互角に渡り合う意外な展開が熱い。悪霊で家族を失い、最後には妹まで奪われそうな依頼人・ユギョン演じるイ・ソムの守ってあげたくなる妹的な雰囲気がそそられる。
モデル出身でスタイル抜群。普段は長身ロングヘアのイメージが強いが、本作ではショートカットで登場。「霊が見えてしまう」能力を持つ役ということで赤いコンタクトを装着して熱演している。
ラスボスとなる悪鬼は、遠隔地からインチキ祈祷師コンビの側の人間に「憑依」して攻撃する。倒しても誰かに「憑依」して襲いかかる波状攻撃は、本作ならではのユニークな見どころ。
残暑厳しいこの時期にぴったりのホラー作だ。
(9月6日全国公開、配給 ツイン)
前田有一(まえだ・ゆういち)1972年生まれ、東京都出身。映画評論家。宅建主任者などを経て、現在の仕事に就く。著書「それが映画をダメにする」(玄光社)、「超映画批評」(http://maeda-y.com)など。