“ヒトの顔”の大きな特徴として“まゆ毛”と“白眼(しろめ)”の存在があります。この2つは、ヒト以外の生物では顕著に見ることができません。
実は、まゆ毛は汗が目に入るのを防ぐという役目の他に、もっと大切な役割を持っています。まゆ毛は、ヒトの顔の豊かな表情を作っており、“顔コミュニケーション”に重要な役割を果たしているのです。実際、タイトル下に掲載した「まゆ毛のワンちゃん」の写真には、なんだか感情っぽいものが読み取れますよね。
ヒトはまず、 まゆ毛で相手の感情を探ります。だから、「吊り上げた“怒りまゆ毛”」と「眉間にしわを寄せた“キライまゆ毛”」のクセは、絶対にやめましょう。それだけで、人付き合いはかなりスムーズになります。
一方の白眼。ヒト以外の動物には白眼は、ほとんど見えません。ただし、犬には少し見えています(理由は後述します)。
実は、人間以外の動物にとって白眼は邪魔なのです。白眼があると戦いの時に目線を読まれてしまい、次に攻撃しようとする場所が相手にわかってしまいます。戦いの場では、白眼は決定的に不利なのです。
また、目線から自分の興味の対象や感情が、相手に読まれてしまうというデメリットもあります。
それなのになぜ、ヒトだけには白眼が顕著に見えるのでしょうか。
ヒトは長い進化の過程で、戦いよりも「コミュニケーション」をとることを選びました。戦いとは逆に、「どこを見ているか」を相手に知ってもらい、“目の表情”を通して、自分がどんな気持ちでいるかを相手に理解してもらう必要があったのです。
さらに、狩りなどで、大声を出してはいけない場合、“目くばせ”をする時も白眼が必要でした。
相手の目が、どんな表情でどこを見ているかで、私たちは相手の気持ちを読みとることができるし、自分の感情を、目を通して表すことができます。まさに、「目は口ほどにものを言う」のです。
犬の白眼も同じ理由です。犬は、猫などとは違って、もともと社会性のある生物で、仲間とのコミュニケーションを大切にする動物なのですが、その犬が、人間と長い間暮らしてきた結果、他の動物にはない表情筋を獲得したのです。それは、目の上の部分を上げ下げする表情筋です。この結果、犬は、わずかに見える白眼と、まゆ毛の部分をつかって、ヒトとアイコンタクトができるようになったのです。
犬は、人に対して、よく“上(うわ)目(め)づかい”をします。これは犬以外の動物にはできない表情です。これによって私たちは、「犬の気持ちを知る」ことができます。
しかも白眼は、「人の命に関わる重要な役割」をになっています。それは、「目の前の顔を、ヒトの顔だと認識させる」という役割です。
目の前に現れた“顔”を認識する際、ヒトは、まず相手の目を見るのですが、この目が「ヒトの目だッ!」とわかるのは「白眼があるから」なのです。白眼がない場合、それはヒト以外の(危険な)動物であるという証拠になります。瞬時に見分けて逃げないと命が危ないのです。
このように、豊かな表情を作る“白眼”は、“顔コミュニケーション”の主役です。白眼でくっきりと縁どられた大きな瞳で、女性にジッと見つめられると、「男はイチコロ!!」です。少なくとも私はそうでした。
次回はいよいよ「“顔”と“恋”の関係」を解説します。男が見るのは“顔”じゃなくて“くびれ”だった!?
●プロフィール
なかむら・かつひろ 1951年山口県岩国市生まれ。早稲田大学卒業後にNHK入局。「サンデースポーツ」「歴史誕生」「報道」「オリンピック」等のキャスターを務め、1996年から「ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)ほか、テレビ東京などでワイドショーを担当。著書に「生き方はスポーツマインド」(角川書店)、「山田久志 優しさの配球、強さの制球」(海拓舎)、「逆境をチャンスにする発想と技術」(プレジデント社)、「言葉力による逆発想のススメ」(大学研究双書)などがある。講演テーマに「“顔”とアナウンサー」「アナウンサーのストップ・ウォッチ“歴史館”」「ウィンウィン“説得術”」など多数。