群馬県邑楽郡千代田町赤岩地区と埼玉県熊谷市葛和田地区を結ぶ、利根川の赤岩渡船に乗ろうとやって来た。熊谷市側の渡船場に到着した船は定員20名の機械船。屋根のない甲板に座席があり、自転車も運べる。さて、乗船料は…。
「この渡船は利根川で唯一となる水上の県道(熊谷・館林線)ですから、誰でも無料です。1名から船を出しますので、遠慮なく使ってください」と船頭さん。
対岸までは400メートル。乗船時間は5分ほどで、その間に千代田町側の方が水深は浅く、コイやウナギが釣れるなど、いろいろと教えてくれた。
千代田町に上陸。渡船場近くの案内板によると、この辺りは高瀬舟が停泊できる利根川の最上流で、江戸期は水運の拠点として栄えたそうだ。赤岩河岸には120隻近くの船があったというからすごい。
前回、荻野吟子記念館のスタッフにも勧められた光恩寺へ向かう。実は、訪問日(9月14日)は「光恩寺/宝林寺 特別拝観デー」になっていて、普段は事前予約が必要な本堂内を誰でも拝観できると聞き、楽しみにしていたのだ。
光恩寺は625年に開山し、弘法大師(空海)が再興したと伝わる真言宗の古刹で、本堂の天井に70畳ほどの竜王画が描かれていた。本堂に向かい右側が海底から上空へ昇る胎蔵竜王、左側は天空から舞い降りる金剛竜王でア・ウンを表し、参拝者を守護する。「御本尊に頭を向け、寝て見上げてください」とお寺の方に勧められるままにすると、向かい合う竜王の表情がよくわかった。
金色の釈迦涅槃像が鎮座する光の涅槃堂や阿弥陀堂などを参拝したら宝林寺へ。途中、石田食堂で昼食にした。名物は豪快!利根川天丼1300円(数量限定)。丼からはみ出す一本穴子、エビ、野菜、玉子の天ぷらが山盛りになっている。完食できるか不安だったが、揚げ方が上手でペロリと平らげてしまった。
宝林寺は黄檗宗の禅寺。中興の祖・潮音道海禅師は館林城主・徳川綱吉(後の5代将軍)の帰依を受け、城下に大寺を建立されたほどの名僧だ。後年、この寺は廃寺となり、貴重な仏像などは宝林寺に移された。
本堂内を見学しながら、副住職から「TEMPLESTAY ZENSŌ」という取り組みを聞いた。寺の離れを一棟貸しして、自分と向き合う時間を得てもらうという。バーベキューやピザ窯などの設備も備え、もちろん、坐禅、写経などもできる。次回は一泊するのもおもしろそうだ。
内田晃(うちだ・あきら):自転車での日本一周を機に旅行記者を志す。街道、古道、巡礼道、路地裏など“歩き取材”を得意とする。