更年期以降の女性は、女性ホルモンの減少によってさまざまな症状が出ることが知られていますが、デリケートゾーン(フェムゾーン)にさまざまなトラブルが起こる疾患「GSM」についてはほとんど知られていません。実は、日本人女性の約50%の女性に症状があると考えられているそうです。
そこで今回は、更年期女性のフェムゾーンケアに詳しい女性医療クリニックLUNAグループ理事長の関口由紀さんに、GSMの原因から予防のためのセルフケア、治療方法について教えていただきました。
■GSMの症状と原因
GSMとはGenitourinary Syndrome of Menopauseの略で、「閉経関連尿路性器症候群」と訳される、慢性かつ進行性の疾患です。閉経し、女性ホルモンが30歳前後のピーク時から10分の1程度まで減ることによって起こります。
外陰部の萎縮などの形態変化と乾燥などにより、陰部がかゆい・痛い、カサカサしている気がする、おしっこが我慢しづらい、尿漏れすることがある、何度も膀胱炎になる、セックスが痛い、出血することがあるなどの症状が出てきます。
GSMを放置すると、陰部のかゆみ・痛み、頻尿・尿モレ、性交痛・性交後出血などの泌尿生殖器の症状が悪化してしまいます。私自身、更年期症状と共にGSMの症状にも悩まされた経験がありますが、とくにひどかったのが腟や外陰のかゆみで、何にも集中できずに生きる意欲を失うほどでした。
そこで、女性ホルモン補充治療(全身)以外でGSMを解消する方法を探し、治しました。正しい情報と知識を持ってケアすれば、GSMは予防できますし、治療もできるんですよ。
■GSM予防のためのセルフケア
GSM対策として大切なことは、正しい洗浄&保湿、腟を支えている骨盤底筋を鍛えること、必要な栄養をきちんと摂ることです。その中で最も大切なのが、日頃からフェムゾーンのセルフケアを習慣にすることです。
フェムゾーン専用の洗浄剤をよく泡立てて、フェムゾーン全体に泡をすべらせるようにやさしく洗います。ただし、腟内は洗わないこと。腟のバリア機能を担っている必要な菌まで殺してしまいます。
入浴後、1日に1回保湿ケア習慣を作りましょう。腟をしっとりした状態に保つことがフェムゾーンの健康のカギ。女性ホルモンが低下することで腟も乾燥し、かゆみや痛み、炎症が出てきます。
■GSMの治療方法
すでにGSMらしき症状が出ている場合、クリニックで治療を受けることが先決です。クリニックでは、症状によっていろいろな治療法が用意されています。
例えば、当クリニックでは(全身の)女性ホルモン補充治療薬や局所専用性ホルモンオイルやクリームの他、尿漏れや黒ずみ、ゆるみなどの対策としてフラクショナル炭酸ガスレーザーやエルビウムヤグレーザー、ハイフなどの医療施術もあります。
また、運動療法のメニューもあります。オンラインによる相談も可能ですのでお気軽に相談してみてください。
■GSM患者さんへのメッセージ
GSMの患者さんは、GSMの不調が改善されてくると同時に、更年期障害の症状も改善されてくることが多いです。人生100年時代、QOLを維持していくため、フェムゾーンを健康に保つことはとても重要なこと。ぜひ、ケアを習慣にしてGSMを予防・克服しましょう。
更年期症状に悩まされている人は、GSMを気にしながら、まずはセルフケアを始めましょう。すでにGSMの症状を感じているなら、セルフケアをしつつ、早めに婦人科などのクリニックに相談してみるとよさそうです。