NHKが、10月20日にNHKスペシャルとして「ジャニー喜多川“アイドル帝国”の実像」を放送。故・ジャニー喜多川氏の性加害問題を取り上げたもので、1時間にわたり多角的に取材。ジャニー氏の幼少期を知るアメリカの友人がインタビューに答え、さらに当時のジャニーズ事務所の関係者が証言を語るなど、新たな情報も多数放送された。調査報道番組としては面白い内容であったものの、旧ジャニーズ事務所(現・STARTO ENTERTAINMENT)に所属するアイドルのファンからは、SNSで不評を買うことになってしまった。
「新証言の多かった報道に一定の評価がありましたが、ファンからは『NHKとテレ東は仇で返すよね』、『NHK、他人事みたいだね』、『20年前に作れば良かったのに』と批判の書き込みがSNSで多い。それに、NHKは局内にも旧ジャニーズタレントがダンスなどを練習する部屋まであるほど、旧ジャニーズ事務所と“ズブズブ”と言えるほどの関係だっただけに、もっとNHK内部の調査も行えという意見が多く見られますね。番組では、元NHKの理事で現在はSTARTO社の顧問を務める若泉久朗氏に直撃取材をしていますが、それ以外のNHK内部の検証は薄味だった印象です。どうしてもNHKが自社を守るような姿勢に見え、怒りが収まらないファンが多いようです」(スポーツ紙記者)
ちなみにNHKは、10月16日にSTARTO社のタレントの番組への起用を再開すると発表したばかり。今回のNHKスペシャルも、禊を済ませるような形で放送したのではないかという声も出ている。
「STARTO社のタレント起用再開は、11月に発表される紅白歌合戦に所属アイドルを出演させる布石とされています。今回のNHKスペシャルも、見方によっては“NHKは調査報道をして禊は済ませましたよ”とアピールしているようにも見えます。そういった意味でも、今回のNHKスペシャルを複雑な視点で見ているファンは多いんです」(前出・スポーツ紙記者)
ファンのみならず、ジャーナリストの望月衣塑子氏は、自身のXで長文の批判を行ったかと思えば、「忍者」元メンバーである志賀泰伸氏も、自身のXで「深掘りは特にされていなかったように思います…何だか違和感さえ感じました」と投稿。必ずしも、理解が得られた調査報道という形にはならなかったようだ。
また、今回の番組を放送したことで、STARTO社との関係がこじれ、紅白への同社タレントの出演も怪しくなってきたとの噂がテレビ業界で出ているという。
「番組では、現在のSTARTO社はほとんど取り上げず、忖度をしているように見えました。ただ、若泉氏に直撃を行ったことで、NHKとSTARTO社の間では微妙な空気が流れているという噂です。また、初代『ジャニーズ』のメンバーだった故・中谷良さんの姉が出演した場面では、性加害問題の補償を行っている『SMILE-UP.』の補償本部本部長がひどい電話対応を行い大炎上。STARTO社としては、今回の番組で再び旧ジャニーズが悪者のように見られ、紅白に出場したらタレントに批判が集中すると危惧しているようです。紅白にはSnow Manなどの出場が内定していると言われているが、急転直下でキャンセルになる可能性さえ出てきましたよ」(民放関係者)
さらに、今回の番組に関しては、「NHK内部でも混乱が生じている」として、制作会社の幹部が、こう明かす。
「NHKスペシャルを制作したディレクターは、社内政治には興味がないタイプだと思われます。今回も、番組の最後に『この問題はこれで終わったとは考えていません』から始まる声明文をテロップで掲出し、NHKの旧ジャニーズタレント出演再開に一石を投じるようなメッセージを出しました。紅白を制作する関係者は寝耳に水だったようで、社内でも“後ろから刺された”と大騒動になっているようだ。旧ジャニーズのグループを紅白に出せばNHKもバッシングを受けることは明白で、最終的な人選をここに来て再検討しているそうですよ」
旧ジャニーズタレントの起用再開を発表したNHKだが、理解を得るのにはさらに、時間がかかりそうだ。
(渡邊伸明)