アナウンサーといえば「会話のプロ」。そのテクニックは“気配り”。あなたも、この秘訣を身に付ければ、好感度バツグン、スバラシイ人間関係をつくりだせます。(写真はNHKニュース・報道番組の頃)
アナウンサーは、「会話名人」として、様々な“顔コミュニケーション”を使っています。いくつかご紹介しましょう。たとえばニュースの場合、アナウンサーは、その展開、内容に合わせて顔の表情を変化させています。また、コメント終わりには、必ずカメラをギュッと見て、そのニュースの総括を“顔”でして、次のニュースとの区切りをつけています。さらに、ゲストやリポーターの話を聞いている時の顔にも工夫があります。相手の話に大きくうなずき、「はい、えぇ」という音声による相槌は、極力控えめにする(邪魔になるので)。そのぶん、相手の話の内容に合わせた、“顔の表情でリアクション”する。
また、「相手の話が続く限り、必ず相手の顔(目ではない、口のあたり)を見続けて、決して目を離さない」。そして「相手と目が合った瞬間は必ず大きくうなずく」。これは会話の基本であり、礼儀でもありますが、実は、放送の現場では、これがなかなか難しい。
スタジオには、たくさんの制約や約束事があります。だから、リポーターやゲストの話が始まるとホッとして台本や原稿や時計に顔を向けてしまいがち…、でもこれはやってはいけない。「放送に不慣れなゲストやリポーターを一人にしてはいけない」のです。
必ず相手に“顔を向けて”、大きくうなずき、「あなたの話はよく理解できるし、すばらしい」 というシグナルを送り続けなければならないのです。そうすることで、相手の話を励まし、助けなければならない。ゲストにしてみれば、一言一句にアナウンサーがOKサインを出してくれているわけですから、これほど話しやすく、ありがたい存在はないのです。
さらに、“視聴者の目線”も意識する必要があります。スタジオセットあるいはパネル、または(中継)現場のどこを見ればいいのかを、顔や手で指し示すことによって、視聴者に教えてあげるテクニックがあります。私はこれを“目線誘導”とよんでいます。これらは、その番組やニュースの成否を握る、アナウンサーの大切な“顔コミュニケーション”です。
目、まゆ毛、まばたき、これら顔の表情をうまく使って、顔でリアクションをする達人がアナウンサーの中にはたくさんいます。テレビを見る時にアナウンサーの表情に注目してみてください。それぞれが個性的で豊かな“顔リアクション”の持ち主です。
お伝えしてきたアナウンサーの“気配りテクニック”は、ふだんの会話でも、接客でも、大いに参考になるはずです。「顔のリアクションをする」「顔を見て話をしっかり聞く」「大きくうなずく」「“目線誘導”をしてあげる」など、あなたも、“顔の気配り”をしてみてください。驚くほど会話がスムースにできます。 なにしろアナウンサーは“顔コミュニケーション”のプロです。先輩のテクニックを受け継いだり、自分で工夫したりして、独特のテクニックを編み出しているのですから。
ところで、ご紹介してきた、たくさんのテクニックを、いちいち覚えていなくてもいい秘訣があります。それは“顔づくり”と“マネ”です。お気に入りのアナウンサーの「顔のマネをする」 と、そのアナウンサーの会話ができるようになるのです。
ホントです。次回から2回にわたりお伝えする予定です。次回はズバリ、「アナウンサーの“バングミ顔”テクニック」。そして、その次は、「アナウンサーの “マネ顔”テクニック」です。お楽しみに。
●プロフィール
なかむら・かつひろ 1951年山口県岩国市生まれ。早稲田大学卒業後にNHK入局。「サンデースポーツ」「歴史誕生」「報道」「オリンピック」等のキャスターを務め、1996年から「ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)ほか、テレビ東京などでワイドショーを担当。日本作家クラブ会員。著書に「生き方はスポーツマインド」(角川書店)、「山田久志 優しさの配球、強さの制球」(海拓舎)、「逆境をチャンスにする発想と技術」(プレジデント社)、「言葉力による逆発想のススメ」(大学研究双書)などがある。講演テーマ 「“顔”とアナウンサー」「アナウンサーのストップ・ウォッチ“歴史館”」「ウィンウィン“説得術”」