アメリカ巨大食品企業や農業問題の闇を暴き、アカデミー賞長編ドキュメンタリー候補にもなった「フード・インク」(08年、米)の続編。本作では、コロナ禍のアメリカのフードシステムの問題点を浮き彫りにする。
まずやり玉に挙げられるのは、この間に爆発的に普及した「超加工食品」。工業的に大量生産される、糖分、塩分、脂肪をたくさん含む日もちする加工食品で、具体的にはシリアルやインスタント食品、菓子パンなどだ。
意外なのは、同じ食材を使っても、こうした工業的な生産過程を経たものほど害が大きいという研究結果だ。脂肪や糖のとりすぎが健康を害するのかと思っていたら、そうではなかった。食品の生産方法こそが重要になる、という新たな知見にビックリさせられる。
ジュースでも糖分を添加する量によって、人の摂取量が変わってしまうという話も興味深い。本来、人間は今、体に必要なものを欲し、適切な量を摂取する能力を持っているが、人工的に甘くしすぎたりした食品は「脳が騙されて」、人間の本能がやがて壊れる危険性があるという。
批判精神あふれる食品問題が提起されるが、圧巻なのは、コロナ禍の米国の加工工場で起きた感染爆発を暴くレポートだ。その背景には、大企業の利益のため、操業を強行した政府の判断がある。と同時に、彼らの市場独占状態を放置して、下流の畜産農家を切り捨てた、米国の食肉流通の理不尽な実態も明らかにする。
実はこれは、労働者の味方と思われているトランプ氏が、前回大統領任期中に進めた政策の結果でもある。その彼が再登場した今、奇しくも前回政権の闇を描いた本作も大いに注目されるべきであろう。
(12月6日より新宿シネマカリテほか全国順次公開、配給・アンプラグド)
前田有一(まえだ・ゆういち)1972年生まれ、東京都出身。映画評論家。宅建主任者などを経て、現在の仕事に就く。著書「それが映画をダメにする」(玄光社)、「超映画批評」(http://maeda-y.com)など。