12月20日に最終回を迎えた柳楽優弥主演ドラマ「ライオンの隠れ家」(TBS系)。スタート時には、平坦な凪のような毎日を繰り返していた市役所勤務の小森洸人(柳楽)と、その弟で自閉スペクトラム症(以降ASDと表記)のアーティスト「みっくん」こと美路人(坂東龍汰)が暮らす家に、「ライオン」と名乗る謎の男の子(佐藤大空)が突然現れるというサスペンス色の濃いドラマだったが、終わってみると「自立とは何か」「そばにいることは愛情の絶対条件か」などを考えさせられる、社会派ヒューマンドラマだったように思う。
特に最終回では、洸人が誰からの連絡にも応えず、一人になって考える時間を持つことに、最初は「ASDの自分のことが面倒くさくなって洸人は姿を消したんだ」「自分のことが嫌いなったから洸人はいなくなったんだ」と勘違いして落ち着きを失っていた美路人が、洸人の真意を聞いて受け入れるプロセスがたまらないほど素晴らしかった。「いつか、みっくんの絵を集めた本を出したい」「大学に行って勉強したい」という答えを出した洸人に、「離れていても、僕たちは同じプライド(群れ)の仲間です」と応えたみっくんの成長に、胸を鷲づかみにされてしまった。
病気や障害のある兄弟姉妹がいる人たちのことを「きょうだい児」と呼ぶが、今作では洸人を主役に据えることで、「きょうだい児」の生きづらさが広く知られたように思う。いつの間にか「しなければいけないこと」が「したいこと」を呑み込んで、「自由」とは何か、わからなくなっていた洸人が大学に再び進学を決めた時には、拍手を贈りたくなった。
最終回の放送が終わってから2日後の22日に、坂東が自身のインスタグラムで公開した、ドラマ撮影の合間に撮ったと思われる佐藤の5枚の写真とコメントにネット上では注目が集まっているようだ。《撮影中一度も体調を壊さず、ごねることもなく、元気に最後まで駆け抜けてくれた大空。あなたは本当に凄いです、皆んな元気をもらってたよ》と称え、ドラマのキーワードになっていたウミネコを引き合いに出し《これからも大きな空にウミネコみたいに羽ばたいて行け!》とエールを贈っているのだ。どの写真も、坂東の佐藤に対する愛情が押し寄せてくる素晴らしいものばかりで、「ライオンロス」を感じていた人々にはうれしくもあり、続編やスペシャルドラマを「連ドラが終わったばかりなのにもう見たい」と思わせているようだ。
綾瀬はるか主演ドラマ「義母と娘のブルース」(TBS系)が、連ドラ放送後にスペシャルドラマとして帰ってきたように、「ライオンの隠れ家」もスペシャルドラマとして帰ってきてくれそうな気がする。とりあえずは今できることとして「また見たい!」と大声をあげたい。
(森山いま)