近年はコンプライアンスの意識が高まり、フリーランスとして働く人の環境も目まぐるしく変化しています。2024年11月1日には、フリーランス新法(フリーランス・事業者間取引適正化等法)が施行され、フリーランスの権利が保護されることになりました。フリーランスへ仕事を発注する側の企業に取引条件の明示義務を課すことで、より公正な取引環境を実現させるということです。
しかし、フリーランスの中には、この法律についてよく知らない人もいるようです。PE-BANKがITフリーランスへ行った調査によると、フリーランス新法については約7割が知らないと回答し、施行内容についてすべて理解している人はわずか2割未満という結果だったそうです。
ところで、フリーランス新法について知らないと、どんな損が起こりうるのでしょうか。ITフリーランス支援機構代表理事の高山典久さんに聞いたところ、「フリーランスが業務を受託する場合は、新法を知らないことでのリスクは基本的にはありません。フリーランス新法は、フリーランスと発注業者の間で曖昧になっていたフリーランスに不利な要素を厳格に定めているからです。また、育児介護への配慮が盛り込まれましたが、これも知らないとリスクになるということはありません」
基本的には知らなくても損はないようですね。しかし、「リスクがないとはいえ、『これだけ保護されているなら、もっと主張すればよかった』と感じることがあるかもしれません。例えば、育児介護への配慮義務が発注者にあるにも関わらず、それを知らないことで交渉せずにあきらめている可能性などがあるからです」と高山さん。自分が主張できる権利を知っておくためにも、フリーランス新法の基本的な内容については知っておいたほうがよさそうですね。
フリーランス新法施行により、ITフリーランス業界にはどのような影響がもたらされるのでしょうか。高山さんは次のように話します。
「これまで不適切な契約をしていた事業者が、フリーランスからの指摘によって自然淘汰されていくかもしれません。業界の適正化、健全化に向かうものと思います。また、フリーランス110番といった相談窓口へのフリーランスによる相談件数が増える可能性があります。発注者側の過失の有無が争われるケースが増えるかもしれませんが、業界の健全化の流れの一環ととらえることもできそうです。これについてはしばらく注視が必要です」
フリーランス業界はこれからも変化していくと考えられます。フリーランスの人は、自分の働く環境に対して敏感になっておくのがよさそうですね。