缶ビールには常日頃、いちばんお世話になっています。
何たって、その利便性。スーパーの売り場にズラッと並んだものから好きなのを選んで買ってきて、家の冷蔵庫に入れておけば、いつでも冷たいビールを飲むことができる。これって、何気ないようですが、相当に幸せな状況であると言えますよね。
また、近年盛り上がりを見せるクラフトビール。小規模なクラフトブルワリーで作られるビールの多くが、無地の缶にオリジナルのラベルが貼られたものだったりします。それが何と言うか、一期一会!って感じでグッとくるんですよね。その希少性ゆえ、1缶1000円近くしたりすることも多いけれど、たまの贅沢に飲むとうっとりしてしまいます。個人的なお気に入りは、奥多摩のブルワリー「VERTERE」のもの。
ちなみに僕の日常缶ビールの定番は、プリン体および糖質がそれぞれゼロの「淡麗プラチナダブル」。ビールというか発泡酒ですが、健康に気を遣ってというより、その爽やかかつ華やかな味わいが気に入って、風呂上がりによく飲んでいます。
どれも、缶のままというよりは、お気に入りのグラスなどで飲むほうがおいしく感じ、そこがまた楽しみの1つであると思います。
続いて、瓶ビール。
僕の子供時代(約40年前)は酒屋さんが届けてくれる瓶ビールが主流で、父親がそれを開けて晩酌をしていた光景を何となく覚えているんですが、最近は、家でわざわざ瓶ビールを用意して飲むという人は、かなりこだわりのある少数派ということになるんじゃないでしょうか。
池波正太郎先生の名著「男の作法」に代表されるように、「いちばんうまいのは瓶ビールである」と語る食通の方は多い。まずその特製上、保存状態が良いことが多い。それを、中華料理屋さんなどでよく見る“ビアタン”的な小さなグラスで、極論、1口ずつ注いでは飲む。それにより常にフレッシュな、ビール本来の味わいを楽しむことができる。他人のグラスのビールが少なくなっているからといって「どうぞどうぞ」などと注ぎあう宴会方式ではない、まさに男の世界。
ただ、ぶっちゃけて言わせてもらっていいでしょうか…。僕はまだまだ到底、池波先生のようなレベルにはたどり着けていない、食通とはほど遠い単なる酒飲み。ビールは繊細な味わいよりも、のどごしを重視したい場面が多いんですよね。するとこう、1口ずつの注ぎ飲みを少々まどろっこしく感じてしまって、え〜い、でっかいジョッキで持ってきてくれ!と思ってしまったりする。
というわけで、生ビール。
これもまたサーバーの管理状況によって味が変わったりする繊細なものなんですが、やっぱりあの爽快さは唯一無二。「そんなの、後々ぬるくなって味が落ちるよ」と言われようとも、あれば大ジョッキを頼んでしまう。右腕にかかる重みを感じつつ持ち上げ、厚いガラスを唇に当てて、グッグッグッと体に流し込む、あの快感!
当然、一概に1位を決定できるものではないんですが、瞬間最大風速としてはやっぱり、きちんとサーバーの手入れが行き届いた店の、キンキンの生ビールになるのかなぁ。いや、どれも好きなんだけど!
さて次回のテーマ。世の中、生ビールを提供しているお店は多いけれども、生ホッピーとなると珍しい。ホッピーは関東を中心とした大衆酒場の定番ですが、それの生。提供するにはかなり厳しい基準があるようですが、そんな「生ホッピーに関する思い出」で、お願いします!
パリッコ:酒場ライター。著書に「酒場っ子」「天国酒場」など多数。スズキナオ氏との酒飲みユニット「酒の穴」としても活動している。「パリッコの都酒伝説ファイル(2)」が2月13日発売!