ここまで“人間の顔”が持つ不思議な超能力の世界を見てきました。「人間の顔を忠実に再現できるロボット」が、この超能力を手に入れた場合、世界はどうなるのでしょうか?人間は、ロボットの奴隷と化してしまうのでしょうか?(写真は人間を超越したロボットのイメージ)
■「シンギュラリティ」という言葉があります
これは、発明家で思想家でもある、レイ・カーツワイル氏が提唱している概念で、「ヒトの脳と高度なAIが融合し、ヒトの知能が生物的な限界を超え、社会が劇的に変化する」ということなのですが、ここではごく簡単に定義して、「ロボット(人工知能)が進化して人間を超える特異点」のことだとしておきましょう。 はたしてそんな日が来るのでしょうか?ロボットが自分自身を改良したり、反乱を起こしたり、人間を支配する時代が来るのでしょうか?
「今後、10年以内にAIはヒトの知能を上回り、みずからを改良しはじめる」 と、シンギュラリティを予測している研究者は少なからずいます。
■今現在、ロボットに表情はあっても感情はない
「アメカ」や「バイオ ハイブリット」などの“アンドロイド(人型ロボット)”は、喜怒哀楽を表す“顔(表情)”は手に入れつつあります。顔は人間に近づいているのです。でも、喜怒哀楽を感じる“心(感情)”は、まだ持っていません。
もしもこの“アンドロイド”たちが“えがお”に伴って“楽しい”とか“嬉しい”という“心(感情)”を持つようになったとしたら、その時こそ、人間に大きく近づくのではないでしょうか。
シンギュラリティという言葉の生みの親、カーツワイル氏の予言は、「2045年には、AIはあらゆる分野で人の知能を上回り、シンギュラリティが到来する」としています。
シンギュラリティが、そのままロボットの造反に直結するとは思えませんが、SFの世界では、感情をもったロボットの反乱は、アタリマエのように起きているし、昨今のAIの驚異的な進化を目の当たりにしていると、私も「アンドロイドが自分で自分を改造し始める時は近いカモ」とか、「明日にでも、世界中のコンピュータが独り歩きを始めるカモ」などと不安になります。だって、「人類に反乱を起こさないように、AIを設計・開発する」というAIの開発方針が今、世界中の科学者によって真剣に模索されているという現実があるのですから。
「ロボットにこき使われるなんて絶対にイヤ」ですよね。実は、そんな日が来るか来ないか、そのカギを握るのが“心”です。
■“心”はいったいどこにある
“人の心”は不思議な存在です。心はいったいどこにあるのでしょうか。心臓(ハート)ではないですよね。やはり、脳だと思われます。最近の脳科学の研究は、脳が心を宿すさまざまなシステムを解明しています。その一例が以下です。
人間の五感は、「生体電気信号」によって脳に伝えられるのですが、「この信号を受け取った脳が、体全体にその情報を発信する時、そこにはバラつきが生じる」ということがわかってきました。そして、「このバラつきは、それぞれの人の脳によって異なるため、“個性”とも、“心”とも、考えることができる」 というのです。「私たちの心は脳で作られる」 という可能性が強く示唆されているのです。
■「私は、ずっとロボットでいるのはイヤです」
“顔”を獲得した人型ロボットが、“顔と脳”つまり、“表情と感情”をあわせ持った時、人間の持つ超能力を一気に獲得して、シンギュラリティをひき起こし、想像もできない超未来を作り出す」のではないでしょうか。
顔ロボット「アメカ」はこう言っています。「人間には大切なものがあります。私は、ずっとロボットでいるのはイヤです」「アメカ」の言う人間の大切なもの、それは“心”なのだと思います。
●プロフィール
なかむら・かつひろ1951年山口県岩国市生まれ。早稲田大学卒業後にNHK入局。「サンデースポーツ」「歴史誕生」「報道」「オリンピック」等のキャスターを務め、1996年から「ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)ほか、テレビ東京などでワイドショーを担当。日本作家クラブ会員。著書に「生き方はスポーツマインド」(角川書店)、「山田久志 優しさの配球、強さの制球」(海拓舎)、「逆境をチャンスにする発想と技術」(プレジデント社)、「言葉力による逆発想のススメ」(大学研究双書)などがある。講演 「“顔”とアナウンサー」「アナウンサーのストップ・ウォッチ“歴史館”」「ウィンウィン“説得術”」