おバカキャラなのに演技をすると艶気があふれ出るTravis Japanの松田元太は、4月スタートのドラマ「人事の人見」(フジテレビ系)で地上波ドラマ単独初主演が発表されたばかり。そんな松田と「松松コンビ」と呼ばれる同グループメンバーの松倉海斗が、ヒコロヒーの初脚本ドラマ「トーキョーカモフラージュアワー」(テレビ朝日系)で初主演しているのだが、視聴して「うまいじゃん!」と声に出してしまうほどビックリした。
松田の演技を「監察医 朝顔」第2シリーズ(フジ系)で見た時は、「この子誰?新人?いいな」と思ったくらいで、声を出すまでには至らなかった。けれど松倉が演じる山形から転勤で上京してきた25歳の宇都宮宏人が、あまりにもリアルだったので「うまいじゃん!」が口から転げ出た感じだ。
第1話から宏人(松倉)は、排卵日の後に性的欲求が増すという27歳の曽根ちゃん(片山友希)と1夜をともにするのだが、電話番号すら知らない間柄なのだ。東京・銀座のコリドー街にあるバーで、同じ会社の野田先輩(お笑いコンビ・さや香の新山)が声をかけた2人組のうちの1人が曽根ちゃんだった。
野田先輩は曽根ちゃんではなく、一緒にいた目黒ちゃん(樋口日奈)を口説くも失敗。バーを出て「金曜の夜に抱く女もいないのかよ、クソッ」と毒づいているのを曽根ちゃんに聞かれてしまう。「そういう意味でおごってるんだろうなって、ミエミエでしたよ」と言う曽根ちゃんに、宏人がすかさず「すいません」と謝罪。終電はないけれど、落ち葉がきれいだから歩いて帰ると言う曽根ちゃんに、宏人はおそらく「東京のオンナ」を感じつつ、恋に「落とされた」のだろう。「東京ラブストーリー」(フジ系)で愛媛から上京した織田裕二演じる永尾完治が、鈴木保奈美演じる赤名リカに初めて心を動かされるシーンのようだと思った。
古臭いからこそ共感できる宏人の心の動きが伝わってきて、第2話もウキウキしながら視聴した。曽根ちゃんにもう1度会いたくて仕方がない宏人を演じる松倉に「やっぱ演技うまいな」と思った。松倉が主演することよりも、ヒコロヒーが脚本を担当していることのほうが前面に押し出されている今作だが、松本千秋氏による同名のショートオムニバスマンガ(単行本3巻からは「ニュートーキョーカモフラージュアワー」)が原作だ。ヒコロヒーは短編マンガを再編集して1本にまとめて脚本にしたといったところなので、もっと松倉を推してもいいように思う。ギョーカイにはホントにヒコロヒーを好きな人が多いよなぁ。
(森山いま)