「松田龍平のことはちっとも好きじゃないのにアリキーノに沼オチした」「これまで松田龍平を意識したことなどなかったのに、アリキーノに会いたくて火曜の夜が楽しみになってる」「どうしよう、新宿でアリキーノを探してる私は重症よね?」最近、私にこのような電話が3本かかってきた。
放送中の松田と奈緒がW主演するドラマ「東京サラダボウル」(NHK)で松田演じる「アリキーノ」こと「有木野了」に、心を奪われてしまった友人からの電話だ。どれも困っているようでいてうれしそうな声をあげていたから「あー、はいはい」と受け流しておいたが、ネット上にも同様の「アリキーノにオチた」とする声が相次いでいるから驚いた。アリキーノの最愛の人・織田覚(中村蒼)が自死した事件の真相はまだ解明されていないが、これまでのストーリーと予告から察するに、阿川(三上博史)が起こした4年前の誤訳事件をマスコミにリークした織田(中村)は、その後自死したが、おそらくアリキーノ(松田)は自分がマスコミにリークしたことにして警察官を辞め、警視庁・通訳センターの中国語通訳人になったのだと思われる。
2月25日放送の第8話の予告で鴻田(奈緒)は「私が一番知りたいのは、どうしてアリキーノがやってもいない漏洩者のふりをしているのかだよ」とアリキーノ本人に質問していたが、それはアリキーノの覚(中村)に対する精一杯の愛情表現からの「漏洩者のふり」だということが、アリキーノに沼オチした女性たちならすでにわかっていることだろう。このアリキーノの深い愛情の一端を味わってみたい。恋愛でなく、抑えていてもあふれてしまう「情」に近いアリキーノの愛に触れている鴻田が羨ましい。一緒にご飯を食べるだけの仲なのに、胃袋でつながっているアリキーノと鴻田は、ヘタな恋人関係よりも深い間柄であることは言うまでもない。
この2人のような関係性を誰かと持つことができたらいいのにと考えている女性は、きっと酸いも甘いもかみ分けられるようになっているのだろう。そういう女性の心にスルリと入り込んできてしまうアリキーノは、罪なオトコだと思う。いそうでいない希少なオトコだということがわかっているのもまた、アリキーノにオチる女性が多い理由ではないだろうか。アリキーノが水餃子を食べている隣で、私もサソリを食べてみたい。
(森山いま)