「鼻でいい香りを嗅(か)げば」、“顔全体”が“うっとり顔”になります。この“うっとり顔”が、実に「いい仕事」をしてくれるのです。
■“呼吸”には心を快調にする力がある
ヒトは“呼吸”の持つ力を使って、自分の心をコントロールできます。世界で行われているほとんどの瞑想法に、この効果は使われています。この効果は一般的に「マインド・フルネス」と言われています。
■“晴顔”で「マインド・フルネス」
「マインド・フルネス」とは、世の中の様々な雑念や偏見にとらわれることなく、ありのままの自分を見つめ直して、精神や体の良好な状態を作りだすテクニックや、そうなった状態のことです。「マインド・フルネス」は、強迫性障害や抑うつ症の改善に効果があり、集中力、記憶力の向上、ストレスに対する抵抗力の増強などが検証されています。具体的には、“晴顔”でゆっくり息をして、“今・ここ”に意識を集中する」のですが…なぜ “今・ここ”なのでしょうか?それは、“今・ここ”こそが「雑念や偏見のない世界」 だからです。
■“今・ここ” の大切さを説いた仏教の説話
お釈迦さまは弟子たちに向かってこう問われました。
「人の一生の長さはどのくらいかね?」
弟子たちは答えます。「そうですねー。人生50年といいますから、やはり50年くらいじゃないですか」「あちこちで戦争があって若い人が死ぬから、せいぜい30年くらいでは?」
すると、お釈迦さまはこう答えました。「みんな違うよ」「人生は、『一呼吸する間』だよ」
弟子たちは一斉に反発します。「そりゃないでしょう。一呼吸が人生ならオギャーと生まれた途端、死ななきゃならない、ですよ」
お釈迦さまはこう答えました。
「あのなあ、お前たち、一呼吸の以前は過去、つまり、過ぎ去ったもの。一呼吸の先は未来、未だ来たらざるもの。どちらとも実体がない。お前たちが生きているのは、“今・ここ”のたった一瞬だけなのだよ。わかる?」「だからね、過去を後悔ばかりしていてもいけない」「未来を思い悩んでばかりしていてもいけない」「どちらも、実体のないものだからね」「過去や未来にとらわれることなく、“今・ここ”を充実させて生きていきなさい」
こんなふうに諭されたといいます。
■鼻を意識した“呼吸”で「マインド・フルネス」
“呼吸”は「マインド・フルネス」効果を得るためには最適な手段とされています。具体的には、どんな呼吸をすればいいのでしょうか。
ここでは、私がやっている方法をご紹介します。まず、手や指を、鼻の息の出入りを確認できるところに置いてください。人差し指を鼻の下に持ってきてもいいし、鼻を両手で覆い隠すようにしてもいいですね。そうして鼻の空気の出入りを確認しながら深呼吸。息を吸うたびに、「今、今、…」と、頭の中で繰り返し言う。そして息を吐くたびに、「ここ、ここ…」 と、頭の中で言う。これの繰り返し、それだけです。慣れてくると鼻だけで呼吸に集中できるようになります。
■“うっとり顔”で効果倍増
できるだけ雑念を振り払い、“晴顔”で、“今・ここ”に意識を集中して、しばらく頑張ってみましょう。私は「吸う・吐く」のセットを4~5回で、すっかり満足します。コーヒーカップを鼻の下に持ってきて、コーヒーの香りを楽しみながら“今・ここ”を繰り返すと効果は倍増します。実はこれ、コーヒーのいい香り(お香でもいい)で、“うっとり顔”を呼び起こすことによって“晴顔効果”と“マインド・フルネス効果”が同時にはたらいて、まさに一石二鳥の晴れ晴れ効果が得られるからです。さっそく、お試しください。“今・ここ”で!!
次回は、「“晴顔”でいいことを言うと、『コトダマ大王』が現れる」です。
●プロフィール
なかむら・かつひろ1951年山口県岩国市生まれ。早稲田大学卒業後にNHK入局。「サンデースポーツ」「歴史誕生」「報道」「オリンピック」等のキャスターを務め、1996年から「ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)ほか、テレビ東京などでワイドショーを担当。日本作家クラブ会員。著書に「生き方はスポーツマインド」(角川書店)、「山田久志 優しさの配球、強さの制球」(海拓舎)、「逆境をチャンスにする発想と技術」(プレジデント社)、「言葉力による逆発想のススメ」(大学研究双書)などがある。講演 「“顔”とアナウンサー」「アナウンサーのストップ・ウォッチ“歴史館”」「ウィンウィン“説得術”」