Q:現在、初めて妊娠中の新米ママです。胎教にいいということで、音楽を聞かせたり、話しかけたり、夫もお腹の子に話しかけてくれています。気になっているのは、産まれてからどのくらいで大人の言葉を理解するのか?ということです。話しかける言葉使いにも注意が必要なのでしょうか。教えてください。
A:命を宿した時から、産まれてくる子のことを考えている…素晴らしい心がけだと思います。
幼児が自分の気持ちを言葉で表現できるようになるのは、だいたい2歳くらいからですが、言葉自体の理解は0歳児から始まっています。ですから、赤ちゃんの世話をしているときに「疲れる~」とか「あー面倒くさい」、「こんなに大変なら生まなきゃよかった」などと愚痴をこぼすのは慎みたい行為です。
これらの言葉を子供は本能で察知し「自分は嫌われている、疎まれている」と感じてしまうからです。
言葉を発しない0歳児であっても、言葉は理解できています。そして、周囲がさまざまな状況に合った言葉で話しかけるからこそ、言葉というものを知り、話せるようになるのです。自分の名前を呼ばれて、目線を呼んだ人向けたり、にっこり笑ったりするのも、自分が何者であるかを理解しているからなのです。
また、名前を呼ばれたり、話しかけられたりすることによって、声をかけてくれた人が自分に関心を向けていることがわかり“嬉しい”という感情も生まれます。つまり、周囲の言葉や動作によって愛情を知り、自分を守ってくれる存在として信頼していくのです。
もちろん、言葉の意味がすべてわかるというのではなく、話の内容の雰囲気を感じ取っているにすぎません。
たとえば、大人でも言葉の通じない異国へ行ってレストランに入ったと想像してみてください。指を洗うフィンガーボールを知らなくて、それをゴクゴク飲んだとします。それを見た周りの客が口々に何かを言いながら自分たちを見たり、中には指をさしあざ笑うような行動をした人がいたとします。言葉の内容はわかりませんが、自分の所作が間違ったマナーだったんだろうな、ということは感じ取れますよね。
赤ちゃんもそのような感じなのです。自分に向かって「かわいいね」といって笑いかけられたら、その言葉と状況は好ましいものと判断するなど、周りの雰囲気で状況をキャッチしているんです。
このように、赤ちゃんであっても子供は大人をよく観察していますから、家族の中で父親をバカにするような言い方や態度をとれば、子供も父親を馬鹿にするようになります。赤ちゃんの前で上の子をいつもあしざまに叱っていれば、下の子もバカにするようになります。
ですから、たとえ小さな赤ちゃんの前であっても子供の前では、家族は互いをいたわり合い、乱暴な言葉は使わないようにしましょう。
(監修・ストレスケア日比谷クリニック 酒井和夫院長/取材・文 李京榮)