先日、バンド「ホフディラン」のメンバー・小宮山雄飛さんがやっているYouTube番組の生配信に、ゲストとして呼んでいただいたんです。
さすがに説明不要かと思いますが、ホフディランは、小宮山雄飛さんとワタナベイビーさんの2人からなる、1996年にデビューしたバンドです。「スマイル」や「恋はいつも幻のように」をはじめとした多数の錚々たる名曲を世に生み出しており、当然僕も、若かりし頃から夢中で聴いていました。なのでここ数年、「酒」という共通項をきっかけに仲良くさせてもらっている状況にまったく現実味がないものの、特に日本屈指の酒飲みであり酒場通である雄飛さんからは、「パリッコ君、〇〇日空いてる?飲みにいこうよ〜」なんて、しばしばお声がけをいただくというありがたい状況。今回も、生放送の2、3日前だったかな。突然連絡をいただいて、そりゃあもちろん! と馳せ参じたわけです。
放送は渋谷区にあるキッチンスタジオで行うらしく、事前に「飲みながら一緒にゆるく話してもらうだけでいいんだけど、何しようかね~?」と連絡をいただいたもので、なんだか反射的に、「おでん鍋を用意して、そこに変なおでん種をあれこれ入れておいて、その感想をあーだこーだ言いながら飲むなんてどうですか?」なんて返信させてもらったんです。そしたら「それいい!」ということになって、当日の企画は「変なおでん飲み会」ということになりました。なんともフットワークが軽いというか、いやむしろノリが軽いというか。だからこそ、偉大なる先輩酒飲みとして信頼できるんです、雄飛さん。
そこで当日、僕が持参したのが、これは前に試したことがあって個人的にお勧めしたかった「サイコロステーキ」。串に刺して煮込むと、いいつまみになるんです。あとはスーパーで目についた「エシャレット」「たらこ」「パイナップル」「クロワッサン」。雄飛さんが用意してくれていたのが「タピオカ」「きゅうり」「ねぎま串」「モッツァレラチーズ」などなど。それらを、おでん鍋に張ったヒガシマルのうどんスープで、ぐつぐつとごった煮にしてゆくんですよ。大根とか、がんもとか、玉子とか、一切入ってないんですよ。気味が悪いでしょう?
ところが!信じてもらえないかもしれないけれど、どれ1つとしてまずいものはなかった。というか、ほとんどが「なんでこれが定番おでん種じゃないの!?」ってくらいの絶品だったんです。塩気と出汁の利いたつゆで煮た、タピオカやパイナップルすらですよ。おでんの底力を思い知らされましたね。
特に感動したのが、エシャレットやきゅうりあたりで、みなさん、きっと煮込んだことないでしょう?ところが出汁で煮込むと、トロリと柔らかく、それでいてきちんとそれぞれの風味は残っていて、まーおいしいんですよ、本当に。いやー、あの飲みは楽しかったなァ。
そういえばはるか昔、家飲み記事の企画で、1人で同様のことを一度やったことがあったんですが、にんじん、玉ねぎ、ピーマン、にんにくなど、どんな野菜を入れてもそれなりに受け止めてくれたんですよね、おでん。あらためて、偉大な料理だと思うし、また、みなさんにおかれましても、既存の概念にとらわれない自由な発想で、もっといろいろなものをおでん鍋の中に放り込んでみてくださいって、声を大にして言いたい気持ちです。まだ発見されていない、奇跡の相性のおでん種、ある気がするんだよなぁ。
というわけで、ナオさんへの次回のテーマ。「思い出のおでん」でどうでしょうか?
パリッコ:酒場ライター。著書に「酒場っ子」「天国酒場」など多数。スズキナオ氏との酒飲みユニット「酒の穴」としても活動している。「パリッコの都酒伝説ファイル(2)」絶賛発売中!