父親の死をきっかけに、勤めていた警備会社を辞めて弁護士資格を取得した宇崎凌(間宮祥太朗)を主役に据えたドラマ「イグナイト‐法の無法者‐」(TBS系)。宇崎はしかし、現代は弁護士の数が増加し、雇ってくれる弁護士事務所がなかなか見つからないという現実を知る。そんな中、轟謙二郎(仲村トオル)が代表を務める「ピース法律事務所」で働くことが決まるも、その事務所は「Ignite(火をつける)」とも言える、争いが起こりそうな「火種」を見つけ、訴訟を焚きつけて大金を稼ぐ「無法者」たちが集まる事務所だったことがわかり、正義感旺盛な宇崎は心中穏やかではないという設定だ。
宇崎は正義感にあふれているだけでなく、向こう見ずで猪突猛進しがち。このキャラはまさに「少年マンガの主人公」のようで、劇画タッチの目鼻立ちがはっきりした間宮によく似合っている。しかしそのキャラは、2022年放送の間宮主演ドラマ「ナンバMG5」(フジテレビ系)で演じた「ヤンキー一家に生まれるも普通の高校生活を送りたかった難波剛」と似ていなくもない。
間宮は少年マンガの主人公のようなキャラだけでなく、波瑠主演の「#リモラブ」(日本テレビ系)で演じた「引きこもり」に快適さを感じるサラリーマン・五文字順太郎や、山田裕貴主演の「ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と」(TBS系)で演じた主役たちを支える若き研究者・蓮見涼平など、おとなしめのキャラを演じても視聴者の記憶に残る演技力を持っている。それなのに「代表作」と呼べるドラマがいまだ「ナンバMG5」しかない。だからこそ主演する「イグナイト」が代表作になることを願う声がネット上に少なくない。
第1話のラストシーンでは、捜査1課の浅見刑事(りょう)から「そうだ、例の子は?」と電話で聞かれた轟(仲村)は「うまくかかったよ」と返答。第2話ラストシーンでは「ピース法律事務所」を辞めようとする宇崎に、「お前はもう、オレのてのひらの中なんだよ」と意味ありげな笑みを見せた轟。はたして間宮演じる宇崎と仲村演じる轟の間には何があるのか。この何かによって、「イグナイト」は間宮の代表作になるのではないかと感じている。
(津島修子)