「寝ている時に見る“ゆめ”」の世界の不思議な出来事も、科学的に説明がつく時代が来ています。
■「ゆめは時として人知を超える」のは、なぜ?
最近は、無意識(潜在意識) の研究が進んできて、脳は“無意識の領域”でも活発に働いていていることがわかってきました。この「“顔”パワー講座」の「“晴顔”と健康②」(3月24日配信)でご紹介した「デフォルトモード・ネットワーク」。これは、「ぼんやりとしている時、人間の“脳”では、さまざまな脳内の情報を結びつける動きが、通常活動の20倍のエネルギーを使って行われている」ということでしたね。つまり“無意識の領域”で、脳は全力で様々な記憶を整理して、その結果、様々な情報が結びついて“飛躍的前進”「ブレイクスルー」が起きる、ということでした。
浅い眠りの時にも、このデフォルトモード・ネットワークが働き、“無意識の領域”に隠された知識や知恵が結び付けられて“飛躍的前進”が起き、それが「“ゆめ”として現れる」のではないでしょうか。私たちが体験する、人知を超えた不思議な「夢の教え」は、デフォルトモード・ネットワークが引き起こすブレイクスルーで説明がつくような気がします。
■「天狗裁き」の世界が現実に
落語に「天狗裁き」という噺(はなし)があります。長屋の熊さんが、「お前の見た“ゆめ”を話してみろ」といろいろな人に要求されます。「見てないものは話せねえ」 と何度言っても誰も認めてくれません。話はどんどんと大きくなって、ついにはお奉行さままで乗り出すことに。その取り調べの最中、熊さんは、今度は何と「天狗」にさらわれてしまいます。その天狗の追及も何とかかわして逃げだした後、大金持ちの養子となることになり、そこのお嬢さんと祝言をあげた後のこと。
「ちょいと、いいかげんにお起きよ」
「何、起きろだ? おめえ、いったい誰だ?」
「あたしは、お前さんの女房だよ」
「えーっ、“ゆめ”かあ……」
という噺です。まるで“ゆめ”の中の出来事が目に浮かぶような落語ですが、人間の無意識の世界の研究はMRIなどの各種スキャナーの発達がもたらした脳活動の可視化により、これからも大きな進展が期待できます。
■“ゆめ”を録画する
最近は、「“ゆめ”を解読する」という、まさに“ゆめ”のような技術が開発されています。
まず、その人が眠っている時の脳信号を磁気共鳴機能画像法(fMRI)で読み取って、それを「画像生成AI」を使い脳(視覚野)の活動を映像化するのです。つまり「見ている人と同じ“ゆめ”」を同時に見ることができる。さらに、“ゆめを記録する”こともできます。「見た“ゆめ”をすぐに忘れてしまう」という方のために“ゆめ”を録画できるのです。
「熊さんの“ゆめ”を、ほかの人が録画で見ることができる」ようになれば、前述の落語「天狗裁き」が、いかに昔の“ゆめ物語”だったかも実感できるかもしれません。
■“ゆめ”を実体験する
ところでみなさん、「これは“ゆめ”だぞ」とわかっている“ゆめ”を見たことがありますか?実はこれ、「明晰夢」と呼ばれています。「“ゆめ”を“ゆめ”だと自覚する」というはたらきが脳にはあるのです。
この「明晰夢」、私も時たま見るのですが、「これは“ゆめ”だぞ」とは思うけれども「その内容までコントロールする」というところまではいきません。ところが、私の知り合いの心理学者に「自由に“ゆめ”を操ることができる」という人がいます。「テーマもストーリーも自由自在だ」 というのです。自分が主役の映画を、「毎晩、見放題」ということで、うらやましい限りですが、こんな“ゆめ”のコントロールも近い将来、実現できるはずです。そう遠くない未来にみんなが“ゆめを楽しむ時代”が来るのです。
さあ、次回からいよいよ「将来を夢みる“夢”」 の話です。“晴顔”で、あなたの“夢”が叶います。
●プロフィール
なかむら・かつひろ1951年山口県岩国市生まれ。早稲田大学卒業後にNHK入局。「サンデースポーツ」「歴史誕生」「報道」「オリンピック」等のキャスターを務め、1996年から「ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)ほか、テレビ東京などでワイドショーを担当。日本作家クラブ会員。著書に「生き方はスポーツマインド」(角川書店)、「山田久志 優しさの配球、強さの制球」(海拓舎)、「逆境をチャンスにする発想と技術」(プレジデント社)、「言葉力による逆発想のススメ」(大学研究双書)などがある。講演 「“顔”とアナウンサー」「アナウンサーのストップ・ウォッチ“歴史館”」「ウィンウィン“説得術”」