放送中の栗山千明主演ドラマ「彼女がそれも愛と呼ぶなら」(日本テレビ系)で大学院生の氷雨を演じている伊藤健太郎。
このドラマは、恋愛する相手を1人と決めず、パートナーに他の恋人がいても「嫉妬」せず、だからといって「浮気」や「不倫」といった裏切りは許さない、「ポリアモリー(複数恋愛)」という生き方をする、高校生の娘がいるシングルマザー・伊麻(栗山)を描いたストーリーだ。6月5日放送の第10話=最終回で伊麻は、氷雨(伊藤)と結婚式を挙げるようだが、そのまま結婚するとは考えにくい。
4月3日放送の第1話から5月29日放送の第9話まで、氷雨はずっと悩み続けていた。それは、自分がバイトしているカフェで出会い、恋に落ちた伊麻と交際することになるも、伊麻にはすでに同居する恋人の空久保亜夫(千賀健永)と風間到(丸山智己)という存在がいたから。氷雨は複数恋愛を理解できないまま、伊麻、亜夫、到との共同生活を開始。この共同生活は、複数恋愛が理解できない氷雨にとって楽しいものではなく、自分以外の亜夫や到と仲よくしている伊麻をイヤでも見たり聞いたり感じることになり、悩んでばかりの日々だった。
第9話ではとうとう「僕だけを愛してほしい」と告げた氷雨だったが、伊麻に断られるものだと思って結婚を申し込んだだけに、受け入れられたことに喜びながらも戸惑いを隠せずにいる。
このドラマで伊藤が演じている氷雨を見ながら、2020年版「東京ラブストーリー」(FODおよびAmazon Prime Videoで配信後、21年にはフジテレビ系で放送)で伊藤が演じた「カンチ」こと永尾完治より、「自分が知っているカンチみたいだ」と感じている。91年版「東京ラブストーリー」で自由に生きる鈴木保奈美演じるリカに振り回されながら悩む、織田裕二演じる不器用なカンチと、「彼女がそれも愛と呼ぶなら」で栗山演じる15歳年上の伊麻に愛されている実感が持てずに悩む、伊藤演じるまっすぐな氷雨が重なって見えて仕方がない。
伊藤が演じたカンチは、石橋静河演じる「東京の女=リカ」を「怖い」と言葉では言っていたが、「自分を愛しているかわからないから怖い」のではなく、「マイペースで走り何をしでかすかわからないから怖い」と言っていたように私には見えた。それは「自分が知っているカンチ」ではなく「NEWカンチ」であり、伊藤が演じる永尾完治なのだと思っていた。伊藤はカンチを演じる際に、1991年版「東京ラブストーリー」はあえて見ていないと公言していたが、カンチを演じた後に見ただろうか。
織田演じる1991年版カンチに似ている氷雨は、栗山演じる伊麻と結婚しないと踏んでいるが、ドラマの着地点としてはどうなるだろうか。
(森山いま)