財務省の福田淳一事務次官が女性記者に性的ハラスメント行為を行っていた件で、テレビ朝日は4月19日の午前0時という深夜に緊急会見。被害者が同局の社員記者であることを公表した。同会見にて取締役報道局長は「女性社員は精神的に大きなショックを受け、事実をあいまいにしてはならないという思いを持っております」と被害者の思いを代弁。そのうえで「当社は財務省に対して正式に抗議をする予定です」と発言し、メディアとしてこの一件を追及する構えであることを明らかにした。
この会見を受け、女性記者に対しては「勇気ある行動」などと称賛の声が続出。そしてハラスメントを働いた財務次官に対しては「絶対に許せない」といった非難の声が集まっている。その一方で世の女性たちからは、テレビ朝日に対しても厳しい声が寄せられているようだ。女性誌記者が語る。
「会見によると、女性記者は上司にハラスメントの事実を報じるべきではと相談したにも関わらず、放送すると本人が特定されて二次被害が心配されることなどを理由に『報道は難しい』と伝えられたとのこと。つまり上司は事実を握りつぶして泣き寝入りを強いたわけです。これはもはや“第二のハラスメント”。そもそも被害者自身が自ら報告したのに『本人が特定されて二次被害』というのはおかしい。そういう発想こそ、社会から性ハラやパワハラがなくならない元凶だということは、以前からさんざん各所で指摘されているのに、なぜここでその愚を繰り返すのか。理解に苦しみます」
そして「第二のハラスメント」はその上司のみならず、テレビ朝日という大企業に対しても問われる問題だという。女性誌記者が続ける。
「今回の会見でさらに釈然としないのは、女性記者の被害告白をまともに取り合わなかったことについて『深く反省をしております』の一言で済ませたこと。よもやテレビ朝日は上司による“第二のハラスメント”を『反省』の一言で終わらせるつもりなのでしょうか? その論理でいえば、次官側も『深く反省』と言えば済むことになってしまう。しかも会見では、女性記者が週刊新潮に証拠の録音テープを提供したことについて『報道機関として不適切な行為』として『当社として遺憾に思っております』とまで言い切った。しかし週刊新潮の取材を受けなければ、このスキャンダルは闇に葬られていたわけで、テレビ朝日は女性記者の行為を批判する前に、まずは会社としての対応のまずさを彼女に謝罪すべきでしょう」
ただしテレビ朝日にも自浄作用はあるようだ。同社の情報番組「羽鳥慎一モーニングショー」では19日の放送で、テレビ朝日社員でコメンテーターの玉川徹氏が「僕は公益通報だったと思う。彼女のやったことは正しかったと思う」と発言。その上で「テレビ朝日は反省しないといけない」とも語った。
このように一社員から正論を突き付けられたテレビ朝日。財務事務次官の責任を追及するのは当然だが、それと同時に会社側の対応についても今一度、自己批判すべきではないだろうか。
(金田麻有)