学校などの集団の場で「静かにしなさい!」と言われたことのある人は多いはず。けれども、そんな言葉をかけられて、「心地よかった」「協力しなきゃ!」と思えた人はあまりいないのではないでしょうか。相手が子どもであれば、なおさらのこと。義務感から姿勢を正す子もいますが、効果は一瞬だけ…ということもあります。
では、どんな言葉をかけれぱよいのでしょうか。教育現場で子どもたちの前に立つとき、私は「~しなさい」と命令せずとも、自然とこちらに注目するような言葉で伝えています。
具体的には、相手が幼稚園生であっても、「考えてくれてありがとう。では、次に行くよ!」「お話聞く姿勢にパッとなってくれたね! ありがとう」と、感謝の言葉を欠かさずに伝えるよう心がけています。「Aちゃん、かっこいい姿勢ですぐにこっちを見てくれてありがとう」。そう言うと、他の子までもがビシッといい姿勢になって、こちら(先生)に注目してくれます。
「ありがとう」を言われて嫌な気分になる子も、「私もありがとうと言われたい」と思わない子も、そうそういません。ですから、誰かのためとか、教室のみんなが聞きやすくなるためとかのように、協力する意識を持たせたいものです。そうすることで認められる経験は、社会に出てからさまざまな考えの人と一緒に過ごすうえで欠かせないものだと思います。
我が子に「ありがとう」と、どれくらい伝えていますか? 命令するのではなく、協力してくれるように話し、言うことをきいてくれたら、ぜひ「ありがとう」と感謝の言葉をかけてあげてください。
私は、幼少時代に母から言われた「ありがとう」が忘れられません。母が仕事中、お腹が空いた私は台所に行き、母が夕食用に作っておいたフライパンの中のおかずを食べてしまいました。そのことを報告すると、母は「食べてくれてありがとう」と言い、「おやつを用意せずお腹をすかせちゃってごめんね」と言ってくれたのでした。以降、私が母の食事を大切にしようと思ったのは、言うまでもありません。誰かに感謝されるとき、その人を大切にしようとする気持ちが生まれます。その人のためならしっかり話を聞きたいな、協力したいな、そう思い、行動できるのです。
ありがとう──身近なのにあまり使っていない言葉だとしたら、ぜひ今日は多めに発信してみてください。見える世界が変わりますよ。
(Nao Kiyota)