平成を彩るカリスマとして、忘れてはならない歌姫が、演歌歌手・藤圭子のDNAを受け継いで1998年にデビューした宇多田ヒカルだろう。15歳とは思えない多様な感情の表現や独特の世界観、そして耳に残るハスキーボイスはデビュー曲の「Automatic」から存分に披露され、累計出荷枚数255万枚という異次元のロケットスタートを切った。また、デビューして間もなく発売した1stアルバム「First Love」は765万枚もの売り上げ枚数を記録し、平成はおろか、歴代で最も売れたアルバムとして君臨しているのだ。
かつて天才音楽プロデューサーの小室哲哉氏が「僕を終わらせたのは宇多田ヒカル」と称賛していた通り、彼女こそ「平成の歌姫」との異名に最も相応しい逸材かもしれない。
他にも、圧巻の歌唱力だけでなく、妖美なダンスパフォーマンスや生き様を含めたファッションアイコンとしての存在感を見せつけた安室奈美恵や、恋愛における繊細な感情を見事に言語化し、多くの女性から共鳴を集めた西野カナもまた「令和」に引き継ぐべき偉大な歌姫ではあるが、前者はすでに引退し、後者は復活時期を明かさないまま活動休止を発表。今後は2人の楽曲を耳にするたびに、失われた平成の美しき記憶が即座に蘇ってくるはずだ。
日本の音楽史における黄金期ともいうべき1990年代から2000年代初期を大いに彩った「平成の歌姫」たちだが、令和には一体どんな歌い手が世間を魅了することになるのだろうか。ニュースターの台頭による新たな時代の幕開けに期待したい。
(木村慎吾)