肌のシミやシワ、たるみ、骨粗しょう症などに現れる体の「老化」。実はこれらの症状、食生活の“ある数値”を知ってコントロールすることで、防ぎやすくなるというのです。そこで、食欲の秋に老化を招かないための、食生活の工夫を紹介しましょう。
寒い日が増えてくる秋は、さっぱりしたものを好みやすい夏と比べ、濃い味付けの料理や肉料理、揚げ物などがより美味しく感じる季節ですよね。でも、昭和大学の糖尿病・代謝・内分泌内科の主任教授である山岸昌一さんによると、このような食べ物の食べ過ぎは、老化を進める可能性があるといいます。
山岸さんによると、体を構成するたんぱく質が糖と結びつき(糖化)、元に戻れないほど劣化して機能の落ちたものをAGEといい、AGEが体内に溜まることで老化が促進されるのだとか。AGEが体内に溜まる仕組みには、次の2通りがあるそうです。
■内因性AGE
体内でつくられるAGEのこと。麺類や甘いものなどを食べたときの血糖値の上昇が糖化を促進させ、この状態が長く続くことでAGEが生成・溜まっていくそうです。
■外因性AGE
食べ物から体内に入るAGEのこと。食事に含まれているAGEを過剰に摂取することで、体内に溜まっていくそうです。食事に含まれるAGEのうち、約7%が体内に吸収されていて、生体内に存在するAGEの約3分の1がこの外因性AGEといわれているそうです。
食欲の秋にAGEの多い食生活を続けると、老化を促進してしまいます。老化予防には、AGEの少ない食事を心がけることが大切なんですね。山岸さんに、AGEの少ない食品をうかがいました。
「高温で長時間調理をするほどAGEが増加します。そのためなるべく低温で、かつ短い調理時間で仕上げた料理を選んでください。揚げ物よりも炒め物、炒め物よりも煮物、煮物よりも蒸し・茹で料理、そしてもちろん新鮮な状態の生食がよりAGEを少なくする調理法です。食品中に含まれているAGE値を数値化したものを“exAGE”(イーエックスエージーイー)といい、サーロインステーキは22,644、鶏の唐揚げ(4個)は5,641、焼き餃子(6個)は4,190、水餃子(6個)は1,625です。AGEの1日の摂取値の目安は15,000exAGEとされているため、1週間で105,000exAGEを超えないように調整して好きな食事を楽しむのがオススメです。例えば、唐揚げや焼き肉を食べた次の日はAGEの低い料理を選べば、平均してAGEの蓄積を抑えることができ、老化のスピードを抑える可能性があります」
ステーキなど、高温で調理する肉料理のexAGEは高いですが、ちょっとした工夫で少なくすることができるそう。山岸さんは「レモン汁にはAGEの生成を抑制する働きがあり、お肉の重量の4分の1のレモン汁にお肉を1時間ほど浸して下処理をしておくことで、AGEを約40~60%減らすことができます。これは、レモンに含まれるクエン酸がたんぱく質と糖が結びつくのを抑え、AGEの発生を抑制してくれる働きがあるため。レモンを絞っても、市販のレモン汁を活用してもOKです。漬け込んだからといって酸っぱくなることはありませんので、安心して活用してくださいね」と話します。
調理法や調味料を工夫してAGEを減らすことで、秋の味覚を堪能しながらも老化の抑制ができるそうです。体内を若々しい状態に保っていつまでも美味しい食事を楽しめるように、AGEの取り過ぎには注意したいですね。
(美容・健康ライター Nao Kiyota)